研究課題/領域番号 |
21K13423
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
鳥越 信吾 十文字学園女子大学, 社会情報デザイン学部, 講師 (00839110)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 待機 / 行為 / 何もしないこと / 時間 / シュッツ / ゴフマン / 意味 / 社会学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、社会学のパースペクティブから待機についてアプローチし、それを理論的・実証的に解明することを目指す。これまでの社会学は、必ずしも十分に待機について研究を重ねてきたわけではない。しかしながら、われわれの日常実践は、待機という行為に溢れている。また、待機児童問題の顕在化や、「◯活」(婚活や妊活、終活など)の隆盛という事情から見ると、現代社会とは、以前よりも「待機」という現象の存在感が増している社会であると言える。したがって、待機についての集中的な研究は、人びとの行為や現代社会の特徴について、新しい視点を提供してくれる可能性をもつものである。
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研究実績の概要 |
待機についての社会学的解明を目指す本研究は、これまで、アルフレッド・シュッツの理論枠組みに依拠しながら、「行為」と「時間」という観点から待機にアプローチしてきた。本年度は、まず、待機を規定する時間のあり方について、認識論的な観点から研究を行い、学会報告を行なった。 また、行為論から待機の研究を進めた。この点でのこれまでの研究成果としては、待機はシュッツの言う「負の行為」であり、外的に観察可能な身体動作を伴うわけではないということが挙げられる。 そのうえで、このたび得られた成果としては以下2点が挙げられる。第一に、待機は必ずしも外的に観察可能なわけではないがゆえに、公共空間においては、「待機をしている」ということを外的に示す必要があるということである。本を読んだり、スマートフォンを操作したりすることによって、人々は自身が待機している(doing waiting)ということをディスプレイし合っているのである(Ayass, Ruth, 2020, “Doing Waiting: An Ethnomethodological Analysis,” Journal of Contemporary Ethnography, 49(4): 1-37.)。第二に、ではなぜこうしたディスプレイを行なっているかというと、何もしないことdoing nothingは、公共空間の規範に抵触するからである。たとえばScheffの明らかにしているように、公共空間で何もしないことは、精神疾患の兆候としてみなされる傾向にある(Scheff, Thomas J. 1984. Being Mentally Ill: A Sociological Theory. 2d ed. New York: Aldine de Gruyter)。 このようにして、シュッツの行為論から出発した本研究は、ゴフマンやエスノメソドロジー的な問題圏へと入っていくに至った。これが本研究の今年度の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
育児による研究進捗の遅れがあった。ただ、文献調査はそれなりに進んだ。とはいえ論文として研究を発表するには至っていないため、来年度は文献調査の加速とともに、研究成果の公表を第一義的な目標において研究を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究により、待機を何もしないこと(doing nothing)との関連で検討していくという研究の道筋がついた。近年、Scott, S. 2020, The social life of nothing. Silence, Invisibility, and Emptiness in tales of Lost Experiences, Routledge.や、Stanley, Steven, Robin James Smith, Eleanor Ford, and Joshua Jones. 2020. “Making Something out of Nothing: Breaching Everyday Life by Standing Still in a Public Place.” The Sociological Review, 68 (6): 1250-72.など、「何もしないこと」についての研究が精力的になされている。来年度は、こうした文献を頼りに研究を進めたい。 また、こうした行為論的なアプローチと、時間論的なアプローチがどのように接合されるのかということについても、今年度検討を進める予定である。
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