研究課題/領域番号 |
21K13449
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
藤浪 海 関東学院大学, 社会学部, 講師 (90819947)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 沖縄 / 移民 / トランスナショナリズム / ディアスポラ / エスニシティ / 自治体政策 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「ディアスポラ空間における沖縄エスニシティの再編成」というテーマを、ホームランドと離散集団、双方の力学に着目しながら追究することにより、マルチスケールな視座からエスニシティの再編成を検討するものである。具体的には行政・市民・経済団体の各アクターに注目し、それらがそれぞれいかなる目的のもと、どのような関係を築きながら沖縄移民との越境的ネットワーク構築に向けた取り組みを実施しているのかを検討する。さらにそうしたネットワークが具体的にどのように用いられ、そのもとで人々の民族的アイデンティティがいかに変容しているのかを検討する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、主に以下の4つの項目について検討を行った。 第一に、世界のウチナーンチュ大会の参与観察調査、および大会実行委員会事務局への員タビュー調査を実施した。大会において首里城再建イベントが同時開催されるなど沖縄アイデンティティの構築に注力されていることが明らかになったほか、オンライン・イベント化されるなかでも観光発信が積極的になされるなど今後の集客を見据えた取り組みがなされていることが明らかとなった。 第二に、世界のウチナーンチュ大会に参加者へのインタビュー調査・アンケート調査を実施した。大会を参加した若者へのインタビューからは、大会のなかで海外・県外の参加者と交流することが沖縄アイデンティティの高まりにつながっていることが看取できた。アンケート調査に関しては、現在データ・クリーニングを実施しており、終了し次第分析作業を進める予定である。 第三に、世界若者ウチナーンチュ連合会、および同団体の受託・運営するUNC(ウチナーネットワークコンシェルジュ)のイベントの参与観察調査を実施した。これらの団体が、沖縄に暮らす人々(なかんずく中学生から20代の若者世代)と海外の沖縄ルーツの若者を結びつける役割を果たしていることを明らかにすると同時に、県内の若者による世界のウチナーンチュ関連のイベントの企画・運営を促し、越境的なネットワーク構築に向けた新たなアクターの育成に取り組んでいることを明らかにした。 第四に、離散先社会である横浜市鶴見区の沖縄・南米コミュニティに注目し8名のライフヒストリーの聞き取りを実施した。鶴見区内でも沖縄系の人々の集住地出身か否かによって、また幼少期における他の沖縄系の人々とのつながりの密度によって、沖縄アイデンティティの強弱や沖縄というルーツへの評価が大きく影響を受けることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に進展していると評価できる理由は、以下の3つの理由による。 第一に、研究成果の発表については、論文が3本掲載され、公開研究会や市民講座、世界のウチナーンチュ大会記念シンポジウム等での口頭報告も行うことができた。論文に関しては、移民政策学会編『移民政策研究』にウチナーネットワーク強化推進事業(沖縄県庁)の政策意図を検討した論文が掲載されたほか、日本移民学会編『移民研究年報』には帰還移民による「世界のウチナーンチュの日」の発案経緯を分析した論文が、また沖縄移民研究センター編『移民研究』にも沖縄移民の当事者支援に関する論文が掲載された。なお2023年5月現在、日本移民学会の上記論文により、第1回日本移民学会奨励賞の受賞が決定している。 第二に、未発表の研究成果についても、順調に発表準備を進めることができている。「世界のウチナーンチュ」に関する各団体の取り組みへの参与観察記録を整理することができたほか、世界のウチナーンチュ大会実行委員会事務局や沖縄移民自身へのインタビュー調査を進めることができた。さらに世界のウチナーンチュ大会参加者へのアンケート調査および聞き取り調査も進めることができ、今後の成果発表について順調に準備を進められているといえる。 第三に、今後の研究に向けた準備の進捗である。これまでの参与観察の過程で、世界のウチナーンチュ言説の発端となった琉球新報の特集連載の記者や沖縄ペルー協会、沖縄アルゼンチン協会等の会長、そしてウチナーンチュ子弟等留学生とつながりを作り出すことができるなど、今後の研究の進展に向けさまざまな可能性を拓くことができた。今後これらの人々へのインタビュー調査を実施することにより、ウチナーネットワーク構築をめぐる力学に関する検討をさらに進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
現在、計画しているのは以下の4つの調査である。 第一は、世界のウチナーンチュ大会にかかわったアクターへの調査である。オンライン併用となった昨年度の大会では、とくに文化芸能関係の協会が開催に大きくかかわることとなった。今後とくに文化芸能関係のアクターに焦点を当てつつ、大会開催の力学の検討を進めたい。 第二に、沖縄県立図書館の調査である。沖縄県立図書館は積極的に移民資料を収集し、それを海外のウチナーンチュが沖縄につながるための材料として提供するなど、沖縄ディアスポラの構築過程おいて重要な役割を果たしていると考えられる。沖縄県立図書館がいかなる意図をもってこうした事業を実施し、越境的なコミュニティ形成において図書館がいかなる役割を果たすのか、今後参与観察やインタビュー調査を実施しながら明らかにしていきたい。 第三に、横浜市鶴見区における越境的なネットワークの形成過程の研究である。現在、横浜市鶴見区では、沖縄県人会によって世界のウチナーンチュとのネットワークを活用した取り組みの計画が進んでいるほか、沖縄系南米出身移民のNPO団体によるブラジルの沖縄コミュニティとのつながりの構築が進んでいる。これらの取り組みにはもちろん、ウチナーネットワークの形成に関する沖縄側からの取り組みもかかわっている。こうしたなかでいかに越境的なネットワークの形成が進んでいくのかを明らかにしていきたい。 第四に、沖縄における学校・社会教育のなかの移民に関する調査である。沖縄においては学校・社会教育において、移民に関するさまざまな取り組みがなされている。それらの取り組みが何をきっかけに始まり、どのような人々によって、何を意図されながら推進されているのかを、参与観察調査やインタビュー調査によって明らかにしていきたい。
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