研究課題/領域番号 |
21K13474
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金原 明子 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (30771745)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | ヤングケアラー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、日本における中高生のヤングケアラーの存在率とその実態について調査する。さらに、ヤングケアラーの支援策を検討するための研究として、ヤングケアラー経験のポジティブな影響について明らかにする。そのために、①国際比較可能なヤングケアラー調査質問紙を作成する、②中高生を対象にした質問紙調査によりヤングケアラー存在率やその内容、友人関係や学びへの影響などを把握する(日英共同研究)、③ヤングケアラー経験者を対象にしたインタビュー調査によりヤングケアラー経験のポジティブな影響を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
英国ノッティンガム大学のStephen Joseph博士との国際共同研究により、日本と他の国の状況を比較することが可能なヤングケアラー尺度を作成した。これは、BBC とノッティンガム大学による調査で使用された尺度を、通常の尺度翻訳の手続きを経て日本語に翻訳したのち、信頼性と妥当性を確認(標準化)したものである。尺度の項目は以下の通りで、選択式で回答を求めた。国際的な定義に則って、①と②を満たす場合、ヤングケアラーと判断した。 <尺度の項目> ①同居家族に病気や障害を抱えている人がいるか、②いる場合、その人の手助けをしているか、③その人は家族の中の誰か、④その手助けが必要である理由、⑤同居家族に病気や障害を抱えている人がいるかいないかに関わらず、過去1か月間の手助けの内容・頻度 さらに、この尺度の一部(項目①、②)を用いて大規模なヤングケアラー存在率調査を行った。首都圏の一つの都道府県における私立全日制中学校・高等学校の団体の協力により、加盟校に通う 5,000 人の中高生に対して調査を実施したところ、ヤングケアラーの存在率が 7.4%と推定された。これは標準化されていない尺度で調べた日本の調査結果と概ね同じ割合であった。この割合は、同じ基準で調べた英国の結果(22%;ケアを多く行っている人に絞ると 7%)よりも低い数字であったが、他のヨーロッパ各国で行われた結果とは類似していた。この調査では、ヤングケアラーであるかどうかの質問項目のほかに、不安や抑うつの度合い、向社会性(進んで人を助ける傾向)などについても回答してもらった。ヤングケアラーは、そうでない人に比べて不安や抑うつ(気分の落ち込みなど)が強いこともわかった。一方で、ヤングケアラーは、そうでない人に比べて、向社会性(進んで人を助ける傾向)が高いこともわかった(Kanehara 2022)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果は、Young carers in Japan: Reliability and validity testing of the BBC/University of Nottingham young carers survey questionnaire and prevalence estimation in 5,000 adolescents. と題して、国際誌に掲載され、成果をプレスリリースで発信し、メディアに取り上げられた。ヤングケアラー尺度を用いた調査を、こころの健康授業とセットで中高生を対象に行っている。調査研究で得られた結果に基づき、 普及と実装研究(dissemination and implementation[D&I]研究)として、学校関係者・家族向けのヤングケアラーに関するリーフレットを作成し、ホームページに掲載した。 ヤングケアラーサポートに関する中高生向け講義を実施したり(埼玉県の私立高校、神奈川県の私立高校)、学校のスクールカウンセラーや養護教員に授業をしてもらえるための研修会を3回実施し、全国から約100名の学校関係者が参加した。 また、ヤングケアラー情報のページを開設し(https://supporteen.jp/young-carer/)、 学校関係者・家族向け冊子と、当事者向け冊子を作成・掲載した。学校関係者・家族向け冊子では、見えにくいヤングケアラー状況、ヤングケアラーの割合、ヤングケアラーの声などを紹介し、学校の先生としてできること、ヤングケアラーの助けになることを掲載した。当事者向け冊子では、ヤングケアラーとはどんな状態のことかについて丁寧に説明し、相談先について紹介した。
|
今後の研究の推進方策 |
普及と実装研究(dissemination and implementation[D&I]研究)として、引き続きヤングケアラーサポートに関する中高生向け講義を実施したり、学校のスクールカウンセラーや養護教員に授業をしてもらえるための研修会を開催し、フィードバックに基づきさらなる改良を目指す。ヤングケアラー情報のページ(https://supporteen.jp/young-carer/)で紹介した学校関係者・家族向け冊子と、当事者向け冊子についてもさらなる普及を目指す。調査で得られたデータの解析によって、日本のヤングケアラーの実情を詳しく調べ、教育、福祉、医療における支援に資するデータを得る。調査の際には、関東の私立高校に加え、対象者の社会経済的背景を考慮し、対象校に公立中学校・公立高校を加えることや、対象者に性別の偏りがないようにする。最終年度は、ヤングケアラー経験のポジティブな影響を明らかにする。想定している影響として、本人の生活や学業、親から本人への養育態度、アイデンティティ形成や価値の分人化にまつわる葛藤、社会的スキルの獲得・キャリア選択の指針への影響を挙げている。論文執筆を行い国際誌に投稿する。
|