研究課題/領域番号 |
21K13512
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
橘高 佳恵 (乙メ 佳恵 / 橘高佳恵) 横浜国立大学, 教育学部, 講師 (10827554)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 進歩主義教育 / 科学教育 / 科学 / 数学 / 教師教育 / 公教育 / リテラシー / 創造性 / レッジョ・エミリア / レッジョ・インスピレーション / 美学 / 探究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、北イタリアのレッジョ・エミリアの教育の理論的基盤を解明するために、アメリカ合衆国の哲学者・教育研究者であるデイヴィッド・ホーキンスの理論と哲学を明らかにするものである。学校改革の革新の系譜を現代において代表するレッジョの思想と実践は、国境を超えて参照されている。しかしその理論的基盤は未解明の部分が大きい。本研究では、レッジョ・エミリアの教育を理論的・実践的に主導したローリス・マラグッツィに大きな影響を与えた人物としてホーキンスを見出し、彼の学びの理論、美学、公共哲学を明らかにする。本研究をとおし、レッジョのヴィジョンは、共同体を基盤とする協同的な創造性の公教育の構想として示される。
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研究実績の概要 |
アメリカ合衆国の科学哲学者であり、学校改革の革新の系譜に重要な理論的基盤を提供したデイヴィッド・ホーキンス(David Hawkins, 1913-2002)について、彼の理論の公共哲学としての側面に迫った。 ホーキンスは、第二次世界大戦中、原子爆弾を開発したことで知られるマンハッタン・プロジェクトにその歴史家(historian)として参加していた。プロジェクトの歴史を記した彼の文書は、のちに書籍として公刊されている。現代科学の致命的なインパクトを経験した彼は、のち、科学と数学のより深い直観(intuition)が人々に共有され、現代社会の「精神の心土(subsoil of mind)」(デューイ)となる必要を訴え続ける。 ホーキンスの見るところ、科学と数学は身の回りの環境の中にあり、誰にとってもアクセス可能という意味で、じつは人間の「普遍的な文脈(universal context)」である。それは明暗と色、温かさと冷たさ、動作と休止などである。しかし科学と数学は、一般に、理解するのが難しいと考えられている。ホーキンスは、妻フランセス(Frances)とともに、「環境教育のためのマウンテン・ビュー・センター(Mountain View Center for Environmental Education)」を設立する。身の回りの環境を、科学や数学に満ちた学びの主題(subject-matter)としてとらえ直し、そうした中での学びを、子どもと大人に保障しようとするものであった。 科学と数学は、誰にとってもアクセス可能という意味で、「偉大な平等化装置(great equalizers)」(ホーキンス)である。こうした意味での科学と数学が、人々に共有されることが、現代社会において、民主主義が機能し地球の生命が維持されるための一つの条件となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デイヴィッド・ホーキンスの理論の公共哲学としての側面について、国際学会において報告することができた。また、新型コロナウイルスの流行により延期していたアメリカ調査を実施することができ、現地でのみアクセス可能なアーカイヴの資料を十分に収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
デイヴィッド・ホーキンスの理論と哲学を、その学びの理論、美学、公共哲学としての側面に留意しながら総体として示すとともに、レッジョ・エミリアの教育の理論的基盤におけるその位置づけを明らかにする。収集した資料の検討を進め、論文にまとめてゆくとともに、学校改革の革新の系譜に位置づく研究会において知見を交流する。
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