研究課題/領域番号 |
21K13548
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
平岡 大樹 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命助教 (60894764)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 養育 / 周産期うつ / 乳児の泣き / 縦断研究 / DNAメチル化 / fMRI |
研究開始時の研究の概要 |
産後(および周産期)うつは,養育者のメンタルヘルスや児の発達に重篤な影響を与えることから,その発症および症状が継続する機序の解明が急務となっている。本研究は,産後の育児ストレスの主要因である乳児の泣き声に着目し,妊娠期の抑うつが乳児の泣き声に与える影響,そして乳児の泣き声が産後の養育者のメンタルヘルスに及ぼす影響を,心理学・分子生物学・神経科学的な指標を通して明らかにすることを目的とする。本研究によって,妊娠期から産後までストレス・抑うつが継続する機序に関して,母子双方を対象とした包括的理解,また乳児の泣き声が初期の母子関係において果たす機能的役割についての理解が得られることが期待される。
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研究実績の概要 |
本年度の研究では,産後のストレスや抑うつ症状に妊娠中の経験がどのように影響するのかを明らかにすることを目指した。三つの主要な視点から取り組みを実施した。
第一に,乳児の泣き声の頻度や特性が育児ストレスやうつ症状のリスクとどのように関連するのかを研究した。妊娠中に妊婦が知覚したストレスが泣き声の特性にどのように影響するのか,そしてそのメカニズムについてはまだ明らかにされていない。本研究では,妊娠後期のストレスを測定し,産後1ヶ月時点での泣き行動や泣き声の特徴との関連を検討する。さらに,子どものDNAメチル化レベルを解析し,上記の関連性における媒介的役割を明らかにすることを目的としている。現在倫理審査,参加者のリクルート,データの測定を開始した。 第二に,産後のうつ症状と赤ちゃんへの絆感情との間に双方向的な関連が存在するかどうかを検討した。産後の母親から5時点でうつ症状と絆感情を測定し,変数間の個人内関連性を検討するランダム切片交差遅延パネルモデルを適応した。その結果,絆感情の困難が先行し,絆感情が悪化した場合にはうつ症状が増加する可能性が示唆された。さらに,妊娠中のストレスや産後の子どもの泣く頻度が,絆感情の困難に寄与することも示された。 最後に,妊娠中のストレスや不安は大麻使用の契機となることが示されているが,妊娠中の大麻使用が母親や子どもに与える長期的な影響について研究した。米国の大規模な縦断データを用いて分析し,妊娠中の大麻使用は思春期初期の視空間能力の発達を阻害することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は妊娠中から産後にかけての縦断データを収集する必要がある。調査への参加のタイミングや研究への参加可能性,さらには近年の新型コロナウイルスの障害によりデータの収集自体が困難な局面もあったものの,非対面で研究を推進できるプロトコルや既存データベースの利用,学外の研究者との共同研究を推進することで,上記のデータを効率的に収集することに成功している。 妊娠中に知覚されたストレスと乳児の泣き声特性の関連についての研究では,倫理審査を終了し,現在データを収集している。データの収集及び解析について事前登録を行い,必要分の参加者からの応募を得ている。既に出産を経て産後の調査に回答を完了した参加者も存在し,来年度中に必要分のデータがすべて揃う予定である。 産後の乳児への絆感情とうつ症状との関連についての研究では,既に分析を完了し,その成果を国内外の学会にて発表を行った。現在論文を作成しており,来年度前半には投稿を完了する予定である。 妊娠中の大麻使用と児の認知発達の関連についての研究では,分析を完了し,英文国際誌にて発表を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては,まず、乳児の泣き声の特性に関する研究について,データの取得を完了する。現時点で目標分の参加者から参加の同意を得ているため,来年度内にデータの取得が完了し,分析を開始できる予定である。妊娠中に知覚されたストレスが先行研究通りに泣き声に頻度や時間に影響するのかを確かめ,その上で泣き声の音響特性やDNAメチル化レベルに影響するか,泣き声の特徴とDNAメチル化レベルの関連をについて詳細な分析を進める。 次に,産後のうつ症状と赤ちゃんへの絆感情との関連性を検証した研究について,これまでの成果をまとめ,学術誌への投稿を完了させる。 最後に,妊娠中の大麻使用と子供の発達との関連については,今年度から訪問研究員として滞在しているUniversity of DenverのPilyoung Kim准教授が妊娠中の大麻使用と養育行動の関連を検討しており,そのプロジェクトに参画することで,どういった機序で子どもの発達に影響したのかをを検証する。 これらの研究活動を通じて,妊娠中の経験が産後のメンタルヘルスや子供の発達にどのように影響するのかをより深く理解する。それにより,産後のストレスや抑うつ症状を防ぎ,親子の健やかな成長を支援するための知見を提供することが目標である。
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