研究課題/領域番号 |
21K13559
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
畑 千鶴乃 鳥取大学, 地域学部, 教授 (60550944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | セルフアドボカシー / 子ども・若者 / LOVE Quebec / カナダ / トラウマインフォームドアプローチ / アドボカシー / 子ども・ユース / 当事者 / 当事者ユース / 意思決定 / 参画 / ユース本人の準備指標 / 子どもアドボカシーシステム / 人材養成課程 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、子ども自身が自らもつ権利を自覚し、強め、前進させるセルフアドボカシーの実証化を国際研究として手掛けるものである。具体的に、カナダ オンタリオ州ライアソン大学とブリティッシュ・コロンビア州ビクトリア大学から学術協力を得て、カナダの公的子どもアドボカシー機関が関わった子どもたちによるセルフアドボカシーの実態と、子どもアドボカシーを実践し得る人材養成教育課程の全容を解明することを目的とする。そして国際研究の成果として子ども法制度含むシステムを改善し、子どもの権利を保障する過程に子ども自ら寄与するシステムと、その道のりをアドボケイトする大人側の専門性を同時に提言することを最終目標とする。
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研究実績の概要 |
本研究では子ども自身が自らもつ権利を自覚し、強め、前進させるセルフアドボカシーの実証化を目指し、今年度は、アドボカシーの知見をもった子どもやユースを育むための教育プログラム(LOVEケベックプログラム)が、カナダケベック州モントリオールで行われており、30数年の実践蓄積があることを把握した。この実践を開発したLOVE Quebecはいじめや差別、暴力にさらされず、安心して生活できる力を身に付ける学びのプログラムとして、弱い立場に立たされる、社会から疎外される経験をもつ若者へ、1993年以来提供し続けてきた。 本プログラムによる展開方法の特長は、参加した若者がテーマに沿って自分の思いをざっくばらんに書くこと、写真を撮ることなどを通じて自分の経験を表現し、それを仲間と分かち合い、認め合うことを中核とし、週1回20数週間にわたり継続的に行う点にある。そしてDr.Hausfather(ケベック大学)らにより、プログラムを受けた若者への有効性が実証されている。社会から疎外され一旦は自分の声を失った若者にとって、プログラムのなかで自分の経験が他者から尊重され、自分の声を表に出す表現方法を多彩に探求する過程で、その心地良さを獲得する継続的且つ教育的プログラムは、他に類を見ない。その意味において先駆性をもち、日本導入と普及の萌芽を模索する価値ある実践と捉えた。 前述の理論を成す子どもらのセルフアドボカシーの不可欠性を理解するため、カナダの子どもや若者が置かれている背景、理論的価値についてオンタリオ州トロントメトロポリタン大学子ども若者ケア学科が提供する大学院教育課程について、特にアドボカシーとトラウマインフォームドアプローチに焦点をおいたカリキュラムの詳細を把握できた。 今後の課題として、継続してLOVE Quebecに学びながら、日本導入のプラットフォームを創造する実践研究に着手したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アドボカシーの知見をもった子どもやユースを育む教育プログラムを把握することができ、またそのプログラムを展開している団体"LOVE Quebec"とも定期的な交流を行う関係性を構築できた。またそのプログラムの効果を測定する研究を手掛けた研究陣であるマギル大学 The Childhood Ethics Projectと研究上の交流を定期的に行う基盤も構築できた。 2023年度においてこのような連携・交流のプラットフォームを創造することができたことで、カナダにおけるLOVEケベックプログラムの子どもや若者に対する有用性をさらに実証する研究と、今後のセルフアドボカシープログラムの日本導入に向けて継続的な研究進展が期待できる。 またトロントメトロポリタン大学子ども若者ケア学科の教授陣とは、研究上の連携関係を構築できたことから、今後、カナダにおける子ども若者ケア学の発展可能性について議論を継続する基盤を固めることができている。併せて、先述の通りモントリオールマギル大学と子ども若者学に関する学術交流ができる基盤も構築できた。 このように本研究の目的である、1)カナダの公的子どもアドボカシー機関からアドボケイトを受けた子どもたちによるセルフアドボカシーの実態解明、2)子どもアドボカシーを実践し得る教育課程の全容解明、双方を解明し得る研究上のプラットフォームを今年度構築し、またほぼ全容解明できた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は本研究の最終年度となるが、継続してLOVEケベックプログラムの展開過程の詳細について把握することを目的とする。 LOVEケベックプログラムは週1回20数週間通して行う子どもや若者に向けたワークショップ、週1回の放課後ポップアッププログラム、およびサマーキャンプの3本柱から成る教育的かつ臨床的プログラムである。これらプログラムの日本への導入に向けて、まずは40編ほどあるワークショップについてひとつひとつのカリキュラムの精査を行う。さらにそれを日本に導入する際に、日本文化や日本の子どもや若者に適応する方策について検討を加えることとする。 併せて、放課後ポップアッププログラムのカリキュラム開発、サマーキャンプのカリキュラム開発を行う。こうしてLOVEケベックプログラムの3本柱全てにおいて日本版カリキュラム開発を目指す。 こうした一連の研究は、モントリオールで展開するLOVE Quebec団体およびマギル大学The Childhood Ethics Projectと定期的に交流し、助言を得ながら進めていく。
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