研究課題/領域番号 |
21K13592
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 松本大学 |
研究代表者 |
田開 寛太郎 松本大学, 総合経営学部, 講師 (40825163)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 湿地を生かした地域づくり / SLE / ラムサール条約 / 韓国 / 小中一貫教育 / 湿地自治体認証 / ESD / 環境教育 / 社会教育 / 学社融合 |
研究開始時の研究の概要 |
ラムサール条約登録湿地は単なる水鳥保護の場ではなく、生物多様性保全、生態系サービスの回復と強化、レジリエントな人間居住の計画・管理、気候変動の緩和と適応を実現するための重要な水環境システムであり、それ自体が重要な価値を持つ教育資源といえる。本研究では、そのような資源をあらゆる教育現場で有効活用するなど、湿地圏におけるESD(持続可能な開発のための教育)のモデル化を試みる。
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研究実績の概要 |
第3年度目の成果として、はじめに、兵庫県豊岡市の事例研究を通じて、自然/文化/社会系の多様な体験がSLEに結びつき、展開していることを確認した。また、湿地教育におけるSLEの役割は、少年期から成人期までの人生経験において、「いつ」「どこで」「誰と」感動体験を共有したかに重点がおかれ、そのような経験を通じて、環境問題についての理解を深め、環境に配慮した行動をとることができるようになる、と結論付けた。この意味で、人格形成とその発達過程において、湿地に関わる市民の主体的な学習や条件整備が求められ、学社融合を核とした湿地保全や利活用の可能性が見えてきた。 次に、海外への訪問調査および国際比較に関しては、禮山コウノトリ郷公園、韓国教員大学、牛浦湿地、順天湾湿地、小・中学校等への実地調査、関係者へのインタビューと意見交流を行った。また、湿地教育をはじめ学校教育や社会教育研究に精通した研究者や、日本国際湿地保全連合の職員と共に行動し、韓国における湿地保全・再生や利活用の幅の広さを確認することができた。最終年度には、ラムサール条約登録湿地関係市町村会議の学習・交流会(2024年11月、鹿児島県出水市を予定)で、本研究の成果を共有する予定である。 最後に、熊本県産山村立産山学園とラムサール条約湿地「タデ原湿原」の実地調査、学校教育関係者へのインタビューを行った。湿地とのつながりが深い草原学習の他に、うぶやま学という特色ある教育課程を編成し、地域人材を活用して地域と一体となった学力向上を目指している。特に興味深いのは、9年生が生徒主導の子ども議会を開催し、地域の川の名称変更など、実践的な学びを深めており、小中連携/一貫の教育制度を活用した地域課題解決の推進力の可能性が見えてきた。以上、湿地の保全・再生とワイズユースの推進において、環境行政だけでなく、教育行政が果たす役割に注目していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の学校教育、社会教育施設への実地調査や関係者へのインタビューを通じて、湿地の保全・再生と賢明な利用に向けた多様な主体による環境教育・ESDの在り方についての理解を深めている。一例として、韓国の禮山コウノトリ郷公園では、コウノトリの野生復帰に関する教育実践が幅広い分野で展開され、学校教育へのプログラム展開だけでなく、地域住民がコウノトリや身近な自然をテーマに芸術文化活動を行うなど、自己実現や教養的向上に資する取組みが見られた。最終年度には、自治組織の中で湿地を積極的に位置付けた取組みに焦点を当て、湿地と地域づくりを結びつけるESDの在り方を明らかにすることが課題としてある。 また、これまでの研究成果が評価され、ラムサール条約登録湿地関係市町村会議の学習・交流会のコーディネーター(研究助言者)を務めることとなっており(2023年度から3か年)、地方自治体や湿地管理者への研究調査に向けた準備が進められている。最終年度には、多様化・広域化する地方自治を念頭に置きながら、湿地を生かした地域づくりの学理論を整理し、学校教育と社会教育の役割を機能させる制度設計を示したうえで、湿地圏におけるESDをモデル化したい。 さらに、日本国際湿地保全連合および環境省からは、「学校教育等における湿地教育の推進に関するヒアリング依頼」があった。湿地教育で優先的に取り組むことが望ましい事項として、学校教育で身に付けた資質や能力を実生活に生かすためには、地域コミュニティや水鳥・湿地センター、動物園・水族館、博物館などとの連携協力が必要不可欠である。また、湿地の教育的価値を、地方自治法における総合計画や教育振興基本計画等の諸方針に位置づけられるように積極的に働きかけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、韓国、豊岡市や出水市などへの実地調査を着実に進めるとともに、各自治体の研究成果を比較し、湿地に関する「ESD」「環境教育/社会教育」の学理論の構築を試みる。また、ラムサール条約登録湿地関係市町村会議に参加し、行政、社会教育や学校教育関係者へのヒアリング調査や関係者とのディスカッションを通して、学社融合(学校教育課程に位置付けた湿地保全活動)の可能性を模索し、湿地圏におけるESDの在り方を明らかにする。また、日本環境教育中部支部と日本湿地学会「湿地の文化、地域・自治体づくりと CEPA・教育部会」の合同研究会を開催し、湿地教育とSLE・CEPA、環境行政、ラムサール自治体認証制度等をキーワードに、学術交流を進め議論を深めていく。 以上の研究成果をベースに、湿地を生かした地域づくりを検討する自治体へのアクションリサーチを実施する。
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