研究課題/領域番号 |
21K13635
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
煮雪 亮 北海道大学, 電子科学研究所, 客員研究員 (70897545)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 反転授業 / ブレンディッドラーニング / 教育工学 / 教育実践 / 物理教育 / 主体的・対話的で深い学び / 高等学校教育 / 授業デザイン / 個別最適化 / 高校教育 |
研究開始時の研究の概要 |
情報通信技術(ICT)を活用し、主体的・対話的で深い学びを実現する手法として反転授業が注目を集めている。その教育効果の高さから高校教育への導入が期待されるが、実践例が少なく、それも短期間での検証に留まっている。本研究では、高校生が主体的な学びを実現するための反転授業デザインの開発を目的とする。実際に物理の授業デザインを考案し、長期的実践を通してその検証を行う。さらに、それを効果的に実現するための教師の生徒への支援方法についても検証する。本研究の成果は、ICTを効果的に活用した教育手法として、反転授業が高校教育に普及するための重要な知見になることが期待される。
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研究実績の概要 |
今年度は、昨年度の実践を踏まえての授業デザインの再検討及び検証に取り組んだ。特に3年生においては、当初の予定に加えて、より主体的かつ個別最適な学びを実現することを目指して単元内自由進度のブレンド型授業の実践に取り組んだ。反転授業では、学ぶ教材・方法や1日1テーマと進度が授業者側で設定していたのに対して、単元内自由進度のブレンド型授業では、学習者である生徒自身が進度を自己管理し、自分に合った学び方や教材を選択できる授業形式を採用した。約1年間に亘る授業実践の結果、生徒へのアンケート調査から約9割以上の生徒が「この授業形式が自律的・主体的に学ぶ力を身につけることに役に立った」と回答した。実際に教室内で取り組む内容は個々にそれぞれだが、決して孤立している訳ではなく常に友人や教員に相談し協働しながら学んでいた。強制的に用意されたグループワークではなく、必要に応じて仲間や先生の力を借りたり、また人に力を貸せたりする「ゆるやかな協働性」に支えられながら「個別最適な学び」が尊重される環境に変化しているように見てとれた。また、アンケートの自由記述分析からは、「学習活動・進度や学習教材の自由度の高さ」や「資質・能力が身に付いている有用感」が生徒の学びを支えている要素であることがわかった。一方で、同時に「学習活動・進度の自由度の高さ」が生徒の学びを不安定にしている要素となりうることも明らかとなった。これらの結果から、生徒は特に学び方の自由度の高さをメリットに感じている一方で、それが同時にデメリットにも感じていることが明らかとなった。以上のことから、生徒個々の学びを尊重しつつも適切なタイミングで生徒同士、あるいは生徒と教員が繋がる場を設定したり、生徒が不安にならずに学びを 個々のペースで進めていくことを支援したりすることが生徒の学びを支える重要な要素であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的通り、初年度の実践を踏まえた授業デザインの再検討及び実践に取り組んだ。さらに、当初の計画に加えて、反転授業の発展的な実践として単元内自由進度のブレンド型授業にも挑戦した。その結果、単に生徒の学びへの主体性を涵養するだけでなく、学びに対する自己調整力を養う授業デザインとなりうることを示唆する結果を得た。これらの結果から、高校3年間に亘って段階的な生徒の学びへの主体性の涵養を支援する方策の方向性を確認することができた。なお、これらの授業デザインの提案や実践に関する学会発表を2件行い、現在これに関連した論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
反転授業の授業デザイン検討に関する研究を継続して行い、特に進学意識や偏差値等の異なる生徒対象群についての効果の差異について検証を進める予定である。また、昨年度に引き続き、反転授業を支える教員の効果的な関わりや、生徒が安心して学びに向かうための教室空間作りについても検証を進めたいと考えている。さらには、単年度だけでなく、1年生から3年生にかけて複数年の実践を通して生徒の変容を促すカリキュラムの検討にも取り組む予定である。
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