研究課題/領域番号 |
21K13636
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
久保 沙織 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (70631943)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 大学入試 / 個別学力試験 / 作題支援 / 過去問データベース / 高校教員の認識 / テキスト分析 / 個別試験 / 探索的研究 / 認知モデル / 仮説生成 / AI |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,個別大学の入試問題作題に係る負担を軽減しつつ,ハイステイクスな試験にふさわしい良質な問題を効率的かつ継続的に作成することを目的として,過去問データベースの作成と,AI(人工知能)技術の導入による作題支援システムの構築を試みる。データベースおよび作題支援システムの活用により,入試問題の作成,試験実施後の分析・評価からフィードバック,そして次年度以降の問題作成に至るまで,作題業務のPDCAサイクルが円滑に機能することが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,個別大学における作題関連業務の負担を軽減し,良質な問題を効率的かつ継続的に作成するための作題支援システムを構築することであった。具体的には,(1)過去問データベースの作成,(2)AI技術を導入した予測・検索システムの構築の2つを目標とする。令和5年度は,東北大学一般選抜前期日程で過去5年間に出題された英語の問題を対象に,過去問データベースの作成を推し進めるとともに,予測・検索システムの基礎となる多変量解析の方針を定めた。データベースには,市販の全国大学入試問題データベースに格納されている情報に加えて,問題形式,素材文の文字数や難易度レベル,得点率等の実施結果に関する情報を含む。 また,他大学の教員と全国の高校教員を対象とした小規模の聞き取り調査を実施した。まず,本学と同じ地方国立大学でアドミッションに従事する大学教員を対象に,作題関連業務の現状と課題について聞き取り調査を行った。その結果,各大学個別の事情と,大学間で共通する課題を整理することができ,作題支援システムの構築にあたって有益な情報が得られた。本学に志願者・入学者を多く輩出している高校の教員を対象とした調査では,東北大学の個別学力試験が高校教員の立場からどのように捉えられているのか,その認識を尋ねた。本研究では,上記(1),(2)の道具的側面からの支援のみならず,情報的側面からの支援を充実させることで,より包括的で持続可能な作題支援システムの構築が可能となると考えている。聞き取り調査で得られた知見は,包括的な作題支援システム構築のために役立てられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
個別大学における入試問題の作成は高度な秘匿性が求められる業務であり,それ故に,作題関連業務の一連のプロセスを明らかにした上で課題を特定し,具体的な支援方法について議論している研究はほとんど見当たらない状況であった。そこで当初の実施計画を見直し,最初の2年間は,個別学力試験の作題関連業務に従事する大学教員を対象としたインタビュー調査の逐語録データや,高校教員を対象とした質問紙調査の自由記述データを探索的に分析することで,作題支援システム構築の理論的基盤となり得る知見を収集することに充てた。その結果として,過去問データベースの作成及びAI技術を導入した予測・検索システムの構築に関して当初の計画通り進めることができなかった。 3年目となる令和5年度は,自大学で出題された英語の問題に対象を定め,過去問データベースの作成に取り掛かることができた。弱いAIの一部である機械学習による類似問題の分類など,カテゴリー分類を目的とした分析を中心に,データベースに格納されたデータに対して多変量解析の手法を適用する見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
最終的な研究成果として作題支援システムのプロトタイプを提示できるよう,まずはデータベースの完成を急ぐ。データベースには,入試実施結果の理解と共有,次年度へ向けたフィードバック,あるいはコンサルテーション等の目的で,データベースの利用者が活用できるような作図機能を搭載することを目指している。データベースと連携させたこの作図機能については,Tableauの利用を検討中である。予測・検索システムにおいて,具体的にどのようなAI技術を用いることが可能かに関しては専門家から意見を仰ぎつつ,上述した(1),(2)の目標を達成すべく研究を推し進める。また,作成した予測・検索システムを,作題関連業務に従事する教員等に実際に使用してもらうことで,ユーザビリティの評価を実施する。 研究の過程ごとに,成果については日本テスト学会,日本教育工学会等で発表するとともに,論文としてまとめ,学会誌に投稿する。
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