研究課題/領域番号 |
21K13638
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09070:教育工学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 良太 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任助教 (00734873)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 越境学習 / 正課教育 / 正課外学習 / 学習支援 / 大学教育 / キャリア展望 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、正課と正課外の学習活動を往還することによる教育的意義を明らかにし、そのための教育支援方法を提示することである。 通常学生は、正課と正課外の学習活動に同時並行的に参加し、双方の学習文脈・状況を往還しながら大学生活を送り学習している。そこでの学習の在り様は、主としての正課と従としての正課外という関係や、相互補完的な関係、あるいは断絶した関係など、個々の学生の考えや特徴、学生が参加する各学習状況などによって様々であると考えられる。そこで本研究は、正課と正課外の往還によるダイナミックな学習の様相を探究し、その支援方法を検討、提示することを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、正課と正課外の学習活動を往還することによる教育的意義を明らかにし、そのための教育支援を提示することである。令和3年度および4年度は、「学生は正課と正課外の学習活動を往還する中でどのような学習成果を獲得しているのか?」という問いへの回答を得ることを目指している。 令和4年度は、令和3年度に引き続き学習成果および正課と正課外の往還を接続させる軸として「キャリア展望」を想定し、その観点から正課と正課外がどのように関連付き、往還が生じているのかを調査した。令和3年度の調査より、大学という正課と正課外を包含する状況では、キャリア展望を常に意識させる構造が存在していることが明らかになった。また、正課や正課外を問わず、没入を伴う学習経験からキャリア展望が明確になり、正課と正課外における学習経験の接続が生起することが分かった。しかしながら、たとえキャリア展望を意識させる構造があったとしても、特に1年次や2年次といった低年次においては正課と正課外の接続が生じず、断絶された状態であることも分かった。従って学生の支援方法を検討するためには、なぜキャリア展望を明確化させる没入を伴う学習が生じにくいのかをさらに深く調査し、学生が直面する困難を明らかにする必要がある。 上述の設定課題に基づき、正課と正課外の両方の学習活動に積極的に参加する2年次の学生を対象とした調査を行った。調査の結果、①正課と正課外の学習活動間の接続は部分的・偶発的なものにとどまること、②低年次の学生はキャリア展望を明確にする目標を持つ一方で特定のキャリアへ絞り込むことへの恐れも同時に抱いていること、③正課外の活動は没入を伴う経験になり得るがキャリア展望と結び付けようとする意識が希薄であること、④しかし正課外の活動は状況依存であり学習を予見できずキャリア展望と意図的に結びつけることが困難であること、等が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度に実施した調査により、キャリア展望を軸とした正課と正課外学習活動の往還の様相、特にその状況における困難が整理された。 本研究では最終的に、正課と正課外の学習活動の往還による学習支援を構想することを目的としている。そのためには、そもそも正課と正課外の学習活動の往還による学習や意義、さらに往還による学習を阻害したり困難にしたりする要因を整理する必要がある。2年間で複数のインフォーマントに対するインタビューおよびその分析を行い、支援の構想に必要な基礎的な情報を獲得できた。これは、研究計画で想定された進捗である。しかしながら、インフォーマント数は限定的であるため、さらに往還による学習の様相等を抽出するために、調査対象の範囲やサンプル数を拡大することが望まれる。このことは、本研究が探索的な調査であり、質的なデータ分析から丁寧に知見形成を試みるアプローチを採用していることから、研究の課題としつつ、概ね順調であると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度および4年度の調査より、学生の行為というミクロな視点からは、まず1.キャリア展望を軸とした正課と正課外の学習活動間の往還は限定的・偶発的であること、2.特に低年次の学生はキャリア展望が明確ではないことから学習活動間の接続が困難であること、が分かった。また、学生を取り巻いている環境というマクロな視点からは、a.大学にはキャリア展望を常に意識させる構造があること、しかし、b.キャリア展望を絞り込むことに対する恐れを生じさせる状況があること、c.没入を伴う学習経験となり得る正課外の学習活動は活動内容の予見が困難であり参加前からキャリア展望と結びつけることは容易ではないこと、が明らかになった。 これらの知見をもとに、様々な学生の支援方法を検討する。具体的には、学生に対する直接的な指導や介入、援助等だけででなく、間接的な制度設計や活動デザインといったいわゆる学習環境デザインについて検討する。 最後に、これまでキャリア展望という観点から正課と正課外の学習活動を往還し、積極的に接続することが教育的に意義を持つという前提で議論を進めてきた。しかし、相対化あるいは断絶という形で双方に平行的に参加することもキャリア展望とは異なる教育的意義を有する可能性があると考えられる。今後の研究への発展を見据え、可能であればキャリア展望以外の観点からの成果と正課外学習活動の関係についても議論を行う。
|