研究実績の概要 |
『Good Behavior チケット』を用いて,学校規模ポジティブ行動支援(School-wide Positive Behavior Support:SWPBS)を実施した。参加者は日本の小中学校の教師198名(男性80名、女性110名、不明8名)であった。参加者はSWPBSグループと非SWPBSグループのいずれかに割り当てられた。参加者は以下の質問票に回答した。1) 生徒に対する教師の肯定的・否定的行動(PNBS)、2) 燃え尽き症候群尺度、3) 教師の効力尺度。両グループを独立変数とし、教師の行動、エフィカシー、バーンアウトを従属変数として、多変量分散分析(MANOVA)を行った。MANOVAの結果、PBSグループと非PBSグループの間には統計的に有意な差が見られた(λWilks = .90, F(9,188)=2.22, p<.05)。PBSグループは非PBSグループに比べて「関与と監視」と「積極的な反応」が有意に高かった(F(1,196)=4.13, p<.05, partial η2=.02; F(1,196)=3.38, p<.001, partial η2=.06)。PBSグループと非PBSグループのBurnout ScaleとTeacher Efficacy Scaleのスコアには有意な差はなかった。今回の結果から、PBSは教師のポジティブな行動を強化したが、教師のエフィカシーを向上させたり、燃え尽き症候群を軽減したりすることはなかった。PBSの使用は教師のエフィカシーとバーンアウトに徐々に影響を与える可能性がある。したがって、教師の個人的な成果を経時的に評価するためには、より長期的な研究デザインが必要である。
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