研究課題/領域番号 |
21K13681
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10010:社会心理学関連
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
長谷 和久 神戸学院大学, 心理学部, 講師 (40828448)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | リスク認知 / ニューメラシー / 心理尺度 / アイコンアレイ / ハザード / 客観的ニューメラシー / 主観的ニューメラシー / 統計情報 / 意思決定 / リスク・コミュニケーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は地震の発生確率や感染症の陽性率のように危険性が刻々と変化する対象(ハザー ド)に対して,各個人が更新される情報をどれだけ活用できるかを測定するために意思決定研究で用いられる課題の有効性を検討し,リスク認知の形成を支える要因の個人差を明確にすることを目的とする。最終的には,そうした個人差の測定に基づき,更新されるリスク情報をもとにして,リスク認知を適切に変容させることが困難な個人に対する効果的なリスク情報の提示方法について明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は,次の2点について実験的調査研究を行い検討を行った。すなわち, (1)客観的なハザードの評価をもたらす個人差変数を測定する既存尺度の検討,ならびに,新規尺度の開発,(2)リスク情報を提示する際に使用されるアイコンアレイがもたらす潜在的な認知バイアスの検討,である。1点目について,どのような個人特性を有する場合に多様なハザード(がん,交通事故等)がもたらす被害の程度を正確に予想できるかについて既存の複数の尺度に基づいて検討を行った。リスクの大きさは当該のハザードがもたらす否定的な帰結の深刻さと,発生確率によって評価される。とくに発生確率については,数字を用いて説明される。このため,数字に対する理解容易性が高い個人において,多様なリスクの大きさを正確に評価できるとの仮説を立てたうえで,複数の数字に対する理解容易性を尋ねる尺度(客観的・主観的ニューメラシー,数字マッピング課題,認知欲求尺度等)を用いて検討を行った。その結果,複数の研究で一貫して客観的ニューメラシーを測定するBerlin Numeracy Testが正確なリスク評価と関連することが示された。また,こうした既存の尺度に加えて,回答のしやすさを考慮した新規作成尺度についても,正確なリスク評価と正の関連があることが確かめられた。2点目に関連して,リスクに関する情報は発生確率や発生件数といった数字を伴って説明される。数字情報をわかりやすく伝達する方法として,複数のアイコンの中の一部のアイコンをハイライトすることで数字情報を伝達するアイコンアレイが用いられる。アイコンアレイは数字情報の正確な伝達を促進するとされる一方で,確率の過大視といったバイアスをもたらすことも指摘される。この点について,アイコンアレイの提示手法やアイコンアレイで伝達される情報の深刻さが確率の過大視をもたらす要因であることを実験的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題について精力的に研究を行っており,昨年度は学会発表(2度),ならびに,学術雑誌(2報)への投稿を行っている。しかしながら,依然としてCOVID-19による影響があり,実験室実験が実施できなかったこと,参加者の募集に時間を要したことなどから,予定していた全ての研究を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
数字を伴って提示されるリスク情報の適切な評価と関連する個人差変数を特定し,リスク関連情報を適切に伝えるための方略について明らかにする。申請者が実施してきたこれまでの研究によって客観的ニューメラシーがリスク関連情報の適切な評価を導く可能性が示された。しかし,客観的ニューメラシーに関する尺度は数的な計算を求める項目が多く,回答そのものが忌避されることがある。このため,計算問題を用いることなく,当該の個人が数値情報にどの程度着目しやすいかを測定する新規尺度を独自に開発した。本尺度も客観的ニューメラシーを測定する尺度と同様に,適切なリスクの評価と正の相関があることが確認されている。今後は,リスクの大きさを伝達するシナリオを用いて,新規に開発した本尺度の有効性と妥当性に関する検討を重ねていく。こうした,個人差変数の検討に加えて,適切にリスクに関連する情報を伝達する手段として,視覚的なピクトグラムの有効性についても併せて検討を行う。アイコンアレイ等の視覚的な図の提示は,数的な情報の理解を促進することが示されている。このため,確率などの数字情報に加えてそれらの視覚的な情報の補助的な提示がリスクに関連する情報の理解を促す可能性について系統的に検討することとする。最終的には以上の研究を踏まえて,個人に応じた適切な情報の提示方略について検討を行っていく。
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