研究課題/領域番号 |
21K13691
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小野田 亮介 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50780136)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 誤情報 / 情報拡散 / 認知バイアス / 意見文 / 中高生 / プレゼンテーション / 情報探索 / 情報発信 / 情報の帰属 / 情報への責任感 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,不特定多数に誤情報を発信する「誤情報拡散」のメカニズムを解明し,中高生の誤情報拡散を抑制するための指導方法を開発する。具体的には,「予防」,「収束」,「育成」の各観点から検討課題に取り組む。「予防」では,生徒が誤情報を選択・拡散するメカニズムを解明する。「収束」では,誤情報を拡散してしまった後の行動を対象とし,拡散者のフォロー行動(例.削除,謝罪)を促す要因について,特に自分が発信した情報に対する責任感の影響に焦点を当てた検討を行う。「育成」では,誤情報拡散を抑制するための指導方法を開発し,中学校や高校の普段の授業を対象とした授業内実験によって効果を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では,不特定多数に拡がりうる情報の発信行為を情報拡散と呼び,不正確な情報拡散を幅広く「誤情報拡散」と表現する。中高生を対象として誤情報拡散の予防や収束のための指導方法を提案することが本研究課題の目的となる。 昨年度の研究では,成人を対象とした調査を通して誤情報拡散に対する楽観性を評価する指標を作成した。本年度は,この指標を中高生向けに実行するための調整と予備調査を実施した。また,誤情報拡散への楽観性評価と他の尺度の関連(例.批判的思考態度)についても検討し,その成果をまとめている。 並行して,特定の立場に基づいた情報発信によって立場に対する判断が極性化する現象に着目し,量的マイサイドバイアス(自分の立場を支持する理由の産出数が反論となる理由の産出数を上回っている状態)と,質的マイサイドバイアス(「自分が立場選択において最も重視した理由」に対する反論を産出していない状態)と判断の極性化との関連を検証した。大学生を対象として複数の論題を提示し,立場選択を求めた上で自分の立場を支持する理由と,想定される反論の産出を求めた。その結果,理由産出後に自分の立場を相対的に高く評価する極性化の傾向が認められた。また,その極性化は量的マイサイドバイアスではなく,質的マイサイドバイアスの低減によって抑制される可能性が示された。すなわち,量的に多様な情報を発信することは必ずしも判断の極性化を抑制せず,自分が重視する理由に対してクリティカルな反論を想定することが判断の極性化を抑制する可能性が示された。そこで,中学生を対象として同様の枠組みからなる実験を実施し,上述の結果の再現性を検討すると共に,実験的操作を加えることで判断の極性化を抑制する要因について検証している。その成果については,分析と論文化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誤情報拡散に対する楽観性評価指標を整理し,中高生を対象とした予備調査の実施まで進めることができた。したがって,次年度以降に実施する本調査の準備は整いつつあるといえる。また,情報発信に依拠した判断の極性化など,誤情報拡散と関連する認知バイアスに関する調査と実験を行い,その成果の一部を論文化している。さらに,同様の枠組みの実験を中学生を対象に実施しており,これは上述の知見の適用範囲や発達差の検討において重要なデータとなる。以上より,本研究課題は順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
誤情報拡散に対する楽観性尺度の内容を精緻化し,妥当性と信頼性の検証を進める。尺度としての頑健性が確認された場合には,国内学会での発表および国内学術雑誌への投稿を進める。また,尺度を中高生向けに修正し,中高生を対象とした妥当性と信頼性の検証も行う。既に研究協力校からは内諾を得ており,予備調査も実施しているが,内容の推敲や本調査の実施時期については未定であるため,相談しつつ研究を進める。 判断の極性化を抑制するための介入実験は既に実行しており,現在結果を整理している。分析完了後,国内外の論文に投稿予定である。 今後は,情報の帰属意識や責任感への評価に関する検討を進めることと,学校での情報発信指導の方法についての検討を並行的に進める予定である。
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