研究課題/領域番号 |
21K13717
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
西尾 祐美子 畿央大学, 教育学部, 講師 (50801594)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 夫婦関係 / 心理的アセスメント / 子育て / カサンドラ症候群 / 支援ニーズ / 自閉症スペクトラム障害 |
研究開始時の研究の概要 |
自閉症スペクトラム障害(ASD)は,社会的コミュニケーションの困難と,行動・興味の偏りが主な症状であり,外見的には障害特性がわかりづらい。そのため,妻はASDの夫から相互的・共感的応答が得られないうえ,周囲からの理解も得にくいという二重の苦しみを抱える。カサンドラ症候群は,ASD当事者のパートナーに生じる身体的問題(疲労,不眠等)や心理的問題(うつ,不安等)を指すが,その特徴やメカニズムに関する学術的根拠は示されておらず,サポートの方法も確立されていない。 本研究ではASD男性の妻を対象に,不適応の実態と支援ニーズを解明し,問題を把握するツールの開発を目的とする。
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研究実績の概要 |
「カサンドラ症候群」は,自閉スペクトラム症(ASD)など共感性や応答性に困難を抱える人のパートナーが身体的・心理的症状を呈する状態を指すが,医学的な診断名ではなく学術的根拠も乏しい。家庭生活で夫に情緒的ケアを求める妻にとって,夫がASDであることは夫婦関係に重大な影響を及ぼすうえ,ASDの障害特性は外見上わかりにくいため周囲から理解を得るのも難しい。そこで本研究は,ASD男性の妻に対して,どのように困難をアセスメントし,支援していくべきかという「問い」のもと,ASD男性の妻の主観的体験から不適応の実態と支援ニーズを解明し,問題をアセスメントするための尺度を開発することを目的に実施している。 2023年度は,ASD男性の妻が抱える困難の実態および支援ニーズの把握を目的に,ASDの医学的診断を受けている男性の妻10名を対象に実施したインタビュー調査の結果について,日本心理学会第87回大会にて発表を行った。夫のASD特性による子育てへの影響を検討するため,子ども有りの7名を,未成年の子がいる子育て家庭と,成人の子がいる家庭に分け,子ども無しの家庭と比較した結果を報告した。 子どもがいる家庭では,「子ども」が最頻出語であり,家庭では夫婦関係と子どもは切り離せないことが窺え,子育て家庭では日常生活での困難な体験が多く語られた。具体的には,夫を理解しきれない自責感や夫のに母子で振り回される様子,金銭感覚の違いや金銭トラブルに関しての語りが特徴的であった。サポートについて,子どものいる家庭では,夫と同様に発達障害のある子どもをきっかけに同じ境遇にある人とつながったり,子どもの主治医や先生に相談したりすることがサポートとなっていたことから,ASD男性を夫にもつ妻は,子どもがいると子どもを媒介して間接的にサポートを受けている一方,子どもがいないと支援につながりにくいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は7月末まで育児休業取得中であったため,8月から研究を再開した。また,2023年度に学会発表を行った際に受け取った意見や指摘ををもとに,研究2で行う予定のアンケート調査の内容を見直しているため,やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
学会発表を通じて,カサンドラ症候群については夫のASD特性だけでなく,妻の心理特性も関連して生じる,すなわち夫婦の相互作用によって生じるため,夫のASD特性だけでなく妻自身の心理特性も考慮する必要があるという結論に至った。そこで,研究2のアンケート調査では,妻自身の心理特性も測定できる尺度や,夫のASD特性に関連する行動を妻がどのように捉えているかを測定できる項目を検討している。 2024年度上半期には質問項目を確定したうえで,下半期に調査委託会社に依頼したうえでオンライン調査の実施を予定している。
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