研究課題/領域番号 |
21K13750
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武藤 拓之 京都大学, 人と社会の未来研究院, 特定助教 (60867505)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | アナロジー / 心的回転 / 身体性 / 空間的思考 |
研究開始時の研究の概要 |
人は,目の前に存在する物体に対し,その表象を心の中に描き,様々な操作を加えることができる。このような能力は空間的思考と呼ばれる知能の一種であり,推論や知識の生成を含む様々な認知活動を支えている。空間的思考のパフォーマンスを向上させる方法として,物体を人や動物の姿に見立てるアナロジーが有効であることが知られているが,このアナロジー効果のメカニズムは未だ十分理解されていない。そこで本研究は,アナロジー効果が有効に作用する条件や身体性の役割に注目し,実験心理学と統計モデリングの手法を用いてその認知メカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
初年度に引き続き,人の空間的思考におけるアナロジー効果(物体を人や動物などの姿に見立てることでその物体に対する心的な操作が容易になる現象)のメカニズムを解明することを目的とした複数の実験を実施した。本年度の主な成果は以下の通りである。 (1) fMRIを用いた実験を実施し,心的回転における身体優位性効果(human-body advantage effect; 人の身体に似た物体はそうでない物体よりも素早く心的回転できる現象)の神経基盤を探索的に検証した。実験の結果,刺激の身体性によって紡錘状回と外線条身体領域の活動パターンが異なることが示され,身体優位性効果における身体知覚の役割が示唆された。本研究の成果を日本基礎心理学会第41回大会で発表し,優秀発表賞を受賞した。 (2) 前年度の研究から,人の身体のアナロジーと動物(蛇)のアナロジーは空間的思考に対して見かけ上類似した促進効果をもたらすが,両者の間に個人間相関は認められないことが明らかになった。本年度は,同種のアナロジー同士(e.g., 人同士,蛇同士)であれば促進効果に正の相関が認められることを実証した。この結果は,前年度の成果が単なる測定の信頼性(内的一貫性)の低さでは説明できないことを示すものであり,アナロジーの種類によって異なる認知メカニズムが関与することを支持する更なる証拠を得ることができたと言える。 これらの知見はともに,人の身体に対する固有の処理過程がアナロジー効果に果たす役割を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はfMRIを用いた実験を実施することができ,神経科学の観点からアナロジー効果のメカニズムに迫ることができた。これにより,研究計画時点では想定していなかった新たな課題が明らかになった。ただし,多様な刺激を用いた検証や姿勢の効果の検証などは翌年度に繰り越すこととなった。これらを踏まえると,総合的な観点から,本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
fMRIを用いた実験では,アナロジー効果における運動機能や空間的操作方略の役割を支持する証拠は得られなかった。しかし,これらの仮説を検証するには神経科学的な手法よりも行動実験の方が適切であると考えられるため,本年度は姿勢の操作などを含むさまざまな行動実験を実施してメカニズムに関する仮説の検証を継続していく。
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