研究課題/領域番号 |
21K13788
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
今城 洋亮 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 博士研究員 (30742902)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | 深谷圏(wrapped) / A無限圏の局所化 / 錐型特異点をもつカラビ・ヤウ多様体 / Special Lagrangian / スペシャルラグランジアン / 深谷圏 |
研究開始時の研究の概要 |
まず、(B)について、すでに論文一つを準備中である。Qの基本群が可解なら分岐被覆がないことがいえる。Qの基本群が一般のときに、分岐被覆を作るのが長期的課題である。(A)については、Holomorphic disc countingの論文を準備中である。(C)については、非孤立特異点の(もっとも簡単な)例について、漸近挙動を調べたい。Leon SimonのCylindrical Tangent coneに関する論文とAlmgrenのBig regularity theoremのCentre manifold Techniqueを組み合わせることを考えている。
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研究実績の概要 |
プレプリント'Nearby Special Lagrangians'の改訂を行った。この論文では、余接束T*Qのwrapped Fukaya categoryで不完全ラグランジュ部分多様体を含むものを使う。この場合にwrapped Fukaya categoryを定義するのは、通常の場合よりも難しい。その方法を述べる。まず、wrapped Fukaya categoryを定義するのに、A無限圏の局所化を使う。 すなわち、非コンパクトならラグランジュ部分多様体の場合、フレアーコホモロジー群がハミルトン微分同相で変わってしまうかもしれないが、これをA無限圏の局所化する。そうして出来るA無限圏をwrapped Fukaya categoryと言う。このためには無限個のラグランジュ部分多様体を考えないといけないが、文献では、完全な場合しか扱われていない。そこで、FOOO(Fukaya, Oh, Ohta, Ono)の本(2009)とAkaho--Joyceの論文を無限個のラグランジュ部分多様体でやり直した。これにはFOOOの方法の仮想チェインを使った。したがって、無限個のものを扱うには気をつけないといけない(倉西空間のRun out problem)。上の論文では、ホモロジー代数に戻って、FOOOのGapped A_infinity categoryの議論が無限個の対象が有る場合にも成り立つことを確かめた(障害理論でA_NK圏をA無限圏にあげるところ)。この部分はJoyceの倉西ホモロジーなど、いわゆるDerived geometryが出来れば要らなくなるが、いまのところ、Derived geometryそのものが(筆者にとって)まだ簡単ではない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Wrapped Fukaya categoryは少なくとも2000年代に研究され始めて、今では、特に、完全ラグランジュ部分多様体に対しては、理論が整備され、かつ色々なことに応用できるようにもなって来ている。上に述べたことでは、特殊ラグランジュ多様体への幾何学的応用のために、深谷圏の理論の基礎的なことで、新しいことが必要になり、そのために、深谷圏の定義を書き直した。このように、深谷圏については、おそらく成り立つであろうと思うようなことでも、実際に証明するには、定義まで戻らないといけなくなるようなことがまだ起こる。例えば、今では、特異ホモロジーやドラームコホモロジーなどのホモロジー論はよくわかっていて、必要なことはすぐに見つかるであろうが、深谷圏については、そのようになってはいないと言える。このようなことが起こっている例をもう一つあげる。余接束T*QのWrapped Floer cohomology group HW*(T_q*Q,T_q*Q)を考える。これはループ空間のホモロジー群H_{-*}(\Om_qQ)に同型になる(環構造も入って、環としても同型になる)。上の論文'Nearby Special Lagrangians'では、この同型について、抽象的に同型というだけでなく、もっと幾何的な情報が必要になる。すなわち、H_{-*}(\Om_qQ)の任意の元Aに対し、T*Qの或るHamilton chordがあって、その代表元がAになることを証明しないといけない。ここで、HW*(T_q*Q,T_q*Q)は1次のHamiltonian \Phiを使って、A無限圏の局所化を使って定義している。したがって、HW*(T_q*Q,T_q*Q)はHW*(T_q*Q,\Phi T_q*Q)の帰納極限である。次の項目で続きをのべる。
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今後の研究の推進方策 |
Wrapped Floer cohomology group HW*(T_q*Q,T_q*Q)の定義は少なくともふたつ知られている。一つは上に述べたように一次のHamiltonianを使うのだが、二次のHamiltonianを使うと、もっと幾何的に定義できる。この場合は、さらに、Abbondandolo, Portaluri, Schwarzが同型HW*(T_q*Q,T_q*Q)=H_{-*}(\Om_qQ)をかなり具体的に作っている。この場合は、上に述べた幾何学的性質、任意の元Aに対し、T*Qの或るHamilton chordがあって、その代表元がAになることは比較的に簡単に分かる。一方、一次のHamiltonianで定義したwrapped Floer cohomologyと、二次のHamiltonianで定義した wrapped Floer cohomologyが同型になることも知られている(この同型でも、求める幾何学的性質は崩れない)。実は、二次のHamiltonianを使わなくても、同型HW*(T_q*Q,T_q*Q)=H_{-*}(\Om_qQ)をもっと詳しく見ることで、求める性質が証明できるかもしれないが、おそらく、いま述べた二次のHamiltonianを使う方法の方が、文献で知られている結果を直接使えるので、今の所は、この方が簡単と思われる。一次のHamitonianだけの場合、同型HW*(T_q*Q,T_q*Q)=H_{-*}(\Om_qQ)の証明に戻らないといけない。この証明はもっと抽象的な圏論を使うので、幾何学的な意味はややわかりづらい(まだ文献に書かれていない)。
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