研究課題/領域番号 |
21K13797
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
粕谷 直彦 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70757765)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 複素曲面 / 接触構造 / 強擬凹境界 / ハンドル接着 |
研究開始時の研究の概要 |
「研究の目的」にも記した通り、強擬凹複素曲面のケーラー性の定義を境界との相性を考慮に入れたものに取り替えたうえで、ケーラー強擬凹曲面の境界に現れうる3次元接触構造を特定する。より具体的には、強擬凹境界への正則ハンドルの接着のうち、(+1)-surgeryのみがケーラー構造のハンドル内への拡張を許容する、ということが言えるのではないかと予想している。これを示すことによって、強擬凹複素曲面に関して、そのケーラー性・非ケーラー性と境界に現れる3次元接触構造のtightness/overtwistednessとの関係性が得られることが期待される。
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研究実績の概要 |
研究課題(17K14193)において、強擬凹曲面への正則ハンドルの接着法を確立することにより「任意の3次元閉多様体はケーラーな強擬凹曲面の境界として実現可能である」という結果を得た。本研究課題ではその続きとして「強擬凹曲面上のケーラー形式と境界との相性がよい場合、境界上の接触構造はtightか?」という問題に取り組んでいるが、未だに解決の糸口は見えない。 その一方で、今年度はSpringer Japanからの依頼を受け、Springer Briefsから出版予定の100ページ超の原稿を書き上げた。内容は4次元ユークリッド空間上のケーラーでない複素構造の構成や3次元接触構造の強擬凹曲面による充填に関する結果など自身の一連の研究結果が主テーマであるが、その解説の準備として小平の楕円曲面論や多変数複素解析・CR幾何における埋め込み可能性に関する研究のサーベイも含んでおり、本課題に取り組むうえでの基礎付けを行ったものとなっている。また、その中で取り上げた3次元接触構造の強擬凹曲面による充填に関する共著論文2本も無事出版することができた。 さらに、野田一成氏との共同研究において、有向閉曲面上の向き付け可能トーラス束の同型類を分類することに成功した。これは本課題の当初の目的とは一見すると関係が薄そうであるが、ケーラーでないシンプレクティック構造が入るトーラス束の決定問題や楕円曲面の微分トポロジー的研究とも関わる話なので、いずれ繋がりが出てくるものと期待が持てる。約40年手つかずだった分類問題を解決したこと、そしてその解決方法がチャートと呼ばれる曲面結び目理論の道具を使って突破口を開いた後で幾何群論的議論を展開するという斬新なものであることから非常にインパクトのある結果であることは間違いない。これについては投稿用の共著論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3次元接触構造の強擬凹曲面による充填に関する共著論文を2本出版できたこと、強擬凹曲面とケーラーでない複素曲面に関する自身の結果とその周辺分野を解説した本を書き上げた(未出版だが、査読はほぼ終了)ことは評価に値する。さらに、野田一成氏との共同研究において、有向閉曲面上の向き付け可能トーラス束の同型類を分類するという非常によい結果を得ることができたこともプラスの材料である。一方で、本研究課題の当初の目標は未だ解決の糸口が見えない。以上を勘案して「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
De Oliveiraが構成した、Stein cobordismになり得ないcomplex cobordismの例というものがある。その強擬凸境界は標準的3次元球面であり、強擬凹境界はovertwistedな3次元球面である。ここに境界を尊重するケーラー構造が入るかどうかを慎重に検討する。標準的なcobordismにconcave handleを二つ接着しただけの非常に具体的な例なので、半年以内に決定できるはずである。また、Marinescu, Lempertらの論文やFolland-Kohnおよび大沢健夫氏の著作の精読を急ぎ、そこで吸収したものを基にCR幾何的観点からのアプローチを行う。 また、野田一成氏との共同研究で得られた結果は今のところトポロジー・幾何群論的な側面が強いが、本研究課題とも将来必ず繋がってくる話だと思われるので、並行して研究を進め、さらなる拡張・進展を目指す。
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