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表現論に関する無限粒子系における,確率解析的手法の新研究と代数的手法との融合

研究課題

研究課題/領域番号 21K13812
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分12010:基礎解析学関連
研究機関岡山大学 (2022-2023)
福岡歯科大学 (2021)

研究代表者

河本 陽介  岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (10825350)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワードランダム行列 / intertwining関係 / 確率微分方程式 / 可積分系 / 行列式点過程 / intertwining法 / 無限粒子系 / 確率解析 / 無限次元確率微分方程式
研究開始時の研究の概要

本研究では,無限粒子系の確率力学を主な対象とする.これは,無限個の粒子が相互作用しながら時間発展する様子を表すモデルであり,特に,強い相互作用を持つ場合が数学的にも物理的にも興味深い.
このような無限粒子系の確率力学の構成・解析にはいくつかの手法が使われている.とりわけ,確率解析的な一般論を使った確率解析的手法と,モデルの代数的構造に着目した代数的手法が盛んに研究されている.この2つの手法には,それぞれ他方には無い長所がある.そこで本研究で目指すのは,これらの2つの手法を融合し,確率モデルをより複合的に理解する枠組みを作ることである.

研究実績の概要

当該年度は,N+1粒子系とN粒子系の時間発展がMarkov核に対してある可換図式を満たすことを意味するintertwining関係の研究を実施した.この性質は固有値過程を始めとするランダム行列に関する確率力学において有用であり,多くの先行研究がある.
古典的な固有値過程であるLaguerre過程についても,あるMarkov核に対してintertwining関係を持つことが知られていた.しかしこれは,異なるパラメーターを持つN+1次元Laguerre過程とN次元Laguerre過程のintertwining関係であった.

そこで本研究では,同じパラメーターを持つN+1次Laguerre過程とN次Laguerre過程がintertwining関係を持つようなMarkov核を新たに構成した.その結果,Laguerre過程の粒子数に関する無限系列が,このMarkov核から定まるprojective systemについて一貫性を持つことを示せた.また,このMarkov核の具体的な数式は一見複雑であるが,ユニタリ群の両側作用で不変なランダム行列の固有値分布の文脈において解釈できることが分かった.本結果はすでに論文として投稿済みであり,査読結果を待っている状況である.

intertwining関係を調べる動機は,intertwining法により,確率力学の無限次元極限を調べる上で重要な役割を果たすことにある.intertwining法とは,確率力学の無限系列がprojective systemに対して一貫性を持つとき,その境界上に対応する力学を構成する手法である.今回Laguerre過程の族の一貫性が分かったため,その境界過程を議論することが可能となった.また,今回構成したMarkov核はランダム行列理論で自然な解釈を持つため,一貫性を持つモデルがLaguerre過程以外にもあると期待される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度はPickrell測度に関係する確率力学の境界過程を構成する予定であった.しかし,これまでに使われてきたMarkov核はこの確率力学に適さないことが分かり,新しいMarkov核を作る必要が生じた.この問題については解決し,適切なMarkov核の構成はできたものの,当初の目的であった境界過程の構成については,上記理由により投稿までは行きつかなかったという点ではやや遅れていると言える.しかし,当初の問題についても必要なintertwining関係やフレームワークの構築などの大部分は証明できており致命的に遅れているわけではないうえに,Markov核の研究からも有用な示唆がいくつか得られており,この点においては当初は予測していなかった発展を見せたともいえる.
加えて,Pickrell測度に関する境界過程について,平衡状態を記述する無限次元確率微分方程式の計算を進めることができた.intertwining法で得られた境界過程の確率微分方程式表示はまだ先行研究がなく,興味深い問題である.
上記を総合的に勘案し,おおむね順調に進展していると判断した.

今後の研究の推進方策

当該年度に構成したMarkov核から定まるprojective systemについて,intertwining法を用いた境界過程の構成法を完成させることがまず最初の課題となる.これにより,Pickrell測度に関係する境界過程が得られる.次にPickrell測度の行列式構造と直交多項式の漸近解析を用いることで,得られた境界過程の無限次元確率微分方程式を求める.上記の課題に関しては,現在までの研究により一定の成果は得られており,大筋では示せている状況である.
その後はいくつかの研究方針が挙げられる.その中で,新しいMarkov核の逆温度の一般化など,Markov核をより詳しく調べる方向を考えている.これは研究開始当初は考慮していなかった方向の話題であるが,最終的には無限粒子系の研究にも有用であると期待される.

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (12件)

すべて 2023 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Steklov Mathematical Institute of RAS/Inst. Information Transmission Problems(ロシア連邦)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] CNRS Inst. Math. Marseille(フランス)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Infinite-dimensional stochastic differential equations and tail 𝜎-fields II: the IFC condition2022

    • 著者名/発表者名
      Kawamoto, Y. , Osada, H., Tanemura H.
    • 雑誌名

      Journal of the Mathematical Society of Japan

      巻: 74 号: 1 ページ: 79-128

    • DOI

      10.2969/jmsj/85118511

    • NAID

      130008144193

    • ISSN
      0025-5645, 1881-1167, 1881-2333
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Interacting Brownian motions in infinite dimensions related to the origin of the spectrum of random matrices2022

    • 著者名/発表者名
      Kawamoto Yosuke
    • 雑誌名

      Modern Stochastics: Theory and Applications

      巻: 9 ページ: 89-122

    • DOI

      10.15559/21-vmsta193

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Dynamical universality for random matrices2022

    • 著者名/発表者名
      Kawamoto, Y., Osada, H.
    • 雑誌名

      Partial Differential Equations and Applications

      巻: 3 号: 2 ページ: 1-51

    • DOI

      10.1007/s42985-022-00154-7

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ランダム行列への誘い(I)2023

    • 著者名/発表者名
      河本陽介
    • 学会等名
      2023年度確率論ヤングサマーセミナー
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] ランダム行列への誘い(II)2023

    • 著者名/発表者名
      河本陽介
    • 学会等名
      2023年度確率論ヤングサマーセミナー
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 無限粒子系の確率力学の末尾事象保存性について2022

    • 著者名/発表者名
      河本陽介
    • 学会等名
      関西大学確率論研究会2022
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Infinite-dimensional stochastic differential equations related to generalised sine random point fields2022

    • 著者名/発表者名
      河本陽介
    • 学会等名
      Workshop on Probabilistic Methods in Statistical Mechanics of Random Media and Random Fields 2022
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Interacting Brownian motions in infinite dimensions related to the origin of the spectrum of random matrices2021

    • 著者名/発表者名
      河本陽介
    • 学会等名
      関西確率論セミナー
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 一般化Sine点過程に関する無限次元確率微分方程式について2021

    • 著者名/発表者名
      河本陽介
    • 学会等名
      大規模相互作用系の確率解析
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [備考] KAWAMOTO Yosuke's website

    • URL

      https://www.mtds.okayama-u.ac.jp/faculty_members/kawamoto/index.html

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書 2022 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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