研究課題/領域番号 |
21K13823
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩崎 悟 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (00845604)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 誘引忌避走化性方程式 / 構造保存スキーム / 時空間パターン解 / 誤差解析 / パルス型進行波解 / 次元縮約 / 分岐解析 / 支配方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
誘引忌避走化性方程式とは,細胞性粘菌と誘引物質と忌避物質の三つの濃度分布の時間変化を記述するモデル方程式である.本研究課題では研究代表者の数値計算により確認されている誘引忌避走化性方程式の特徴的な時空間パターン解の形成メカニズムを,パルス解同士の弱い相互作用,パルス解の中心座標の振る舞いを決定する低次元ダイナミクスの解明,方程式と空間領域の対称性に着目した同変分岐理論の応用,などの数学理論と数値解析により解明することを目指す.この研究課題の達成により,誘引忌避走化性方程式に限らず,より広範な方程式の時空間パターン解の形成メカニズムを解明する手がかりになると期待している.
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研究実績の概要 |
誘引忌避走化性方程式とは,細胞性粘菌と誘引物質と忌避物質の三つの濃度分布の時間変化を記述する方程式であり,ミクログリアという細胞のダイナミクスを記述する数理モデルとしても知られている.既存研究により,定数定常解近傍での時空間パターン解の存在が示されているが,大きな振幅を持つ解,たとえばパルス進行波解などの時空間パターン解の形成メカニズムは詳しく分かっていない.本研究課題では,誘引忌避走化性方程式における時空間パターン解の形成メカニズムを,パルス解同士の相互作用,パルス解の中心座標の振る舞いを決定する低次元ダイナミクスへの帰着,により解明することを目指している. 誘引忌避走化性方程式の解には適当な保存量が存在し,パターン形成においてその保存量が重要な役割を持つことは明らかとなっている.よって,数値計算における近似計算でもその保存量を変化させずかつ数値的な振動を抑えるような数値スキームを用いる必要があるが,この問題はKeller-Segel方程式に対する構造保存型の風上差分スキームを誘引忌避走化性方程式に拡張することで,空間一次元と空間二次元の問題に対して既に克服した.特に空間二次元の場合は有限要素法に基づく方法となっているため,任意の形状の2次元空間領域上の数値計算を行うことができ,数多くの興味深い振る舞いをする数値解を得ることに成功している.現在は,空間一次元の場合の数値スキームの理論的な誤差解析の結果をまとめた論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点では,空間一次元と空間二次元の構造保存スキームの実装が完了しており,ここから様々な興味深い数値解が得られることがわかっている.今後はそのような特徴的な解の中でもどのような解に焦点を絞り,その生成メカニズムを解明するのかということを整理して研究を進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
空間一次元の構造保存スキームの理論的な誤差解析はほぼ完了し論文を執筆中のため,次は空間二次元の構造保存スキームの理論的な誤差解析も進めていく.一般に空間次元が上がるほど理論的な誤差解析は込み入った計算が必要になるため,空間二次元の場合は空間一次元の結果から自明に拡張されるものではないことに注意する. また,本研究対象の方程式である誘引忌避走化性方程式が,非局所効果をもつ微分方程式の近似モデルとして導出されることが近年明らかになった.本研究で行っている構造保存スキームの数値計算が,非局所効果をもつ微分方程式の数値計算にどのように貢献できるかという切り口でも研究を進めていく予定である.
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