研究課題/領域番号 |
21K13828
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12030:数学基礎関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 誠希 東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (00866311)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 関係代数 / 有限モデル理論 / 数理論理学 / 計算困難さ / グラフ / オートマトン / 関係計算 / 計算複雑さ |
研究開始時の研究の概要 |
論理の決定可能性および計算複雑さの解析の問題は、Church-Turingによる一階述語論理の決定不能性の結果にはじまる。 申請者の近年の研究では、Tarski-Givantによる3変数一階述語論理と関係計算の表現力の等価性の結果を一般化し、3変数ポジティブ存在論理とポジティブ関係計算の表現力の等価性を明らかにした。 本研究では、ポジティブ性をもつ(否定演算を持たない)論理・関係代数の高い決定可能性を起点として、論理と関係代数の双方向的な視点から、新たな決定可能な体系の解明やより精密な計算複雑さの解析を与えることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本課題では、ポジティブ性をもつ(補演算を持たない)論理・関係代数の決定可能性を起点として、論理と関係代数の双方向的な視点から、新たな決定可能な体系の解明やより精密な計算困難さの解析を与えることを目的として、研究を進めている。2023年度においては以下をおこなった。 (1)3変数存在論理と等価な表現力を持つ"存在関係計算"を導入した。この体系は制限された補演算で拡張されており、ポジティブ関係計算と比べて真に表現力が高い。推移閉包演算で拡張した存在関係計算の体系に対して、辺飽和(edge saturations)を用いたグラフ集合による特徴付けを与え、これを用いて決定可能性/計算困難さを調べた。より具体的には、この体系の等式理論はフルの場合では決定不可能だが、関係積の演算を持たない体系ではcoNEXPで決定可能で、さらにその2つの部分体系に関してPSPACE完全であることを示した。本結果は、国際会議 LICS2023 に採択され、発表をおこなった。 (2)存在関係計算と関連して補演算で拡張したクリーニ代数を言語モデルで考えた。正規言語は補演算で閉じている一方、言語モデルにおける補演算拡張は真に表現力を高める。本研究では第一歩として、変数に適用可能な補演算で拡張した場合のいくつかの部分体系のcoNP完全性、文字列の部分体系に対する等式理論の完全性を示した。本結果は、国際会議 AFL 2023 に採択され、発表をおこなった。 (3)変数出現を制限した関係計算:関係計算の等式理論は決定不可能、さらに変数を1種類に制限しても決定不可能である。そこで変数の出現回数に関する制限を考え、結合(dot)と余結合(dagger)の演算子の交替回数を制限した場合には体系が有限的になり、決定可能であることを示した。本結果は、国際会議 MFCS 2023 に採択され、発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に挙げていた項目に対して研究実績に挙げた通りの進展を得ており、論文を発表している。 一方で採択に至っていない内容や残されている課題があるため、これらについて引き続き取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き決定可能性の拡大とモデルクラスの一般化についての考察を並行して進める。 モデルクラスの一般化に関しては、研究実績(2)で扱っている言語モデルは(一般化された)関係モデルの(構造の制限された)サブクラスとして扱えることが分かった。これに基づき、言語代数の関係モデル的な考察をおこなう。関係モデルとして扱うことにより、存在関係計算に対して導入した辺飽和の手法などを適用できる可能性がある。 前年度に挙げていた公理化の問題は難航しているためjump演算子による拡張などの体系の変種を含めて考察する。 なお本年度は国際会議論文の発表回数が想定よりも多くなったため、前倒し支払請求をおこない、最終年度の出張費用を本年度の出張費用に充てた。最終年度に出張旅費が繰り越されなかった場合、最終年度は主に論文誌への投稿をおこなう予定である。
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