研究課題/領域番号 |
21K13839
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
関坂 歩幹 明治大学, 総合数理学部, 助教 (00785107)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 複雑ネットワーク / 非局所発展方程式 / 位相的指数 / スペクトル問題 / Maslov index / Stability index / ネットワーク上の反応拡散系 / 反応拡散系 / ネットワーク / Maslov Index / Stability Index / 連続極限 / 力学系理論 |
研究開始時の研究の概要 |
複雑ネットワークの理解は,コンピュータネットワークや機械学習などのコンピュータサイエンスに限らず,脳の神経ネットワークや遺伝子ネットワークなど広汎な分野の進展や深い理解のために重要な課題となっている.ネットワーク上の情報や化学物質の拡散現象は,離散ラプラシアンを用いた拡散方程式により記述され,リーマン多様体上のラプラシアンを用いた熱方程式のグラフ版と言える. 本研究では,連続極限が存在する複雑ネットワークの性質を調べるために,ネットワーク上の拡散方程式,あるいはその連続極限を取った発展方程式に現れる作用素のスペクトルを位相的手法により調べ,ネットワーク構造と位相的性質の関係を明らかにする.
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研究実績の概要 |
複雑ネットワーク上の拡散現象を記述する非局所発展方程式の定常解に関するスペクトル理論とその位相的枠組みを構成するために以下を考察・実施した. 1.非局所発展方程式の定常解は一般に微分・積分方程式を満たす解として与えられる.例えば,従来の反応拡散系などは,バナッハ(ヒルベルト)空間上のベクトル場の平衡解,周期解,ホモ・ヘテロクリニック解として定常解が与えられる.非局所反応拡散系の場合も同様にバナッハ空間上のベクトル場を与えるが,初期値問題として定式化するためには時間遅れ・進み系で行われるような関数空間の設定が必要であることがわかった.同様にして,積分方程式の定常解を幾何学的に考察するためには,本質的に無限次元となることを回避する必要があることがわかった.これにより,例えば安定多様体と不安定多様体の交叉を有限次元ベクトル空間内で考えることができ,種々の交差理論を適用することが可能となることが判明した. 2.非局所反応拡散方程式と従来の反応拡散系の間には,反応拡散近似と呼ばれる近似手法によって関係性を与えることができる.この手法は無限次元バナッハ空間上のベクトル場の近似ベクトル場を与える手法である.この手法の拡張・一般化により,どのような積分核であれば反応拡散系で近似できるのかについて研究を行った. 3.ネットワーク上の反応拡散系は,情報の拡散現象の一般化であるが,空間多次元上の反応拡散系の特異極限を考えることによっても導出される.この関係について,グラフあるいは単体複体上のベクトル束および接続形式を用いて,どのようなベクトル場がグラフ上の反応拡散系として存在し得るかについて研究を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度のコロナウィルスによる国際研究集会などへの参加ができなかった問題や,研究者達と対面で議論することができなかったことの遅れの影響がまだある.しかしながら,本年は非局所方程式が持つ超越性・無限次元性と幾何学的な枠組みとの関係のいくつかが判明するなどの大きな発展があった.これにより時間遅れを持つ微分方程式との関連が明らかになり,研究開始当初にはなかった分野への応用が考えられる.また,グラフ上の微分幾何学の発展から,ネットワーク上の反応拡散系に対する新しいアプローチとして,領域の特異極限に伴う接続形式や曲率形式の極限を適用することを試みている.これはネットワーク上の拡散現象がもたらすパターン形成問題に,曲率などの影響を付与できることを示唆しており,複雑ネットワークに対する幾何的性質と位相的性質の関係があることを意味している.研究を進める中でこのような新しい問題に直面した結果,初年度の遅れを取り戻すほどは研究が進展しなかった.
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今後の研究の推進方策 |
非局所反応拡散系の近似手法や無限次元Maslov指数の応用,拡張など,昨年度に明らかになった種々の結果を複雑ネットワークの連続極限の問題に適用する.また,昨年度に明らかになった新しい問題を各専門家と議論しながらできるだけ早期に解決を目指す.その後,初年度から未解決である連続極限に伴う隣接グラフや相互作用が生成するMorse関数の極限の問題について取り組む.
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