研究課題/領域番号 |
21K13840
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上田 祐暉 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任助教 (10835771)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 数値解析 / 流体計算 / 有限要素法 / 安定化 / NURBS / IGA |
研究開始時の研究の概要 |
流体問題の数値計算における数値振動を回避し良い計算結果を得るために、既存の手法に用いられるパラメータの選択に数学的な基準を与える。流体の挙動を記述する数理モデルをコンピュータで近似的に解く際には、物理的なパラメータだけでなくモデルの近似に関係するパラメータも、数値解の挙動に大きな影響を与える。本研究では、計算手法に対する数学解析により、より適切な数値解の挙動を与えるような良いパラメータ選択の数学的な基準を与える。数値計算手法の安定性、妥当性を数学的に保証することで、コンピュータシミュレーションの効率化や高度なシミュレーション技術への応用に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究は流体計算に対する数値計算手法におけるパラメータ選択に関して、『良い』選び方の基準を与えることを目的としている。流体問題を記述する偏微分方程式に対し、通常の有限要素法を適用すると、数値振動と呼ばれる挙動が観察されることがある。振動を含む数値解は、現実の流体現象のシミュレーション結果としては不適切なものであるため、これを回避するために、安定化有限要素法やNitscheの方法などが提案されている。ただし、これらの数値計算手法に関する数学研究は収束性や誤差評価が主である。すなわち、計算メッシュ幅を無限に小さくしたときに、元の数理モデルの解(弱解など)に近づいていく、ということはよく研究されている反面、メッシュ幅を有限に留めた際のふるまいに関する議論は多くない。そこで本研究では、メッシュ幅以外のパラメータに注目し、その数値計算結果への影響を考察する。特に元の数理モデルには存在しない、つまり偏微分方程式に上述の計算手法を適用することで初めて導入されるパラメータをどのように選択するか、という問題に対し、数学解析により判断基準を示すことを目的としている。 当該年度では変分マルチスケール法と衝撃補足項の二つに注目し、主に先行研究の調査などを行った。これらはいずれも流体問題に対する安定化有限要素法と関連して有効に機能することが知られている一方で、その数学的性質については研究の余地が大いにあると思われる。これらが数値計算結果に与える影響を数学解析により定量的に評価することが、コンピュータシミュレーションの更なる効率化につながると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗状況は、当初の想定よりも遅れていると言わざるを得ない。 昨年度において変分法的なアプローチによりパラメータ選択をある種の最小化問題と関連付ける、という方針を撤回し、変分マルチスケール法と衝撃補足項に注目する方向への転換を図っている。 変分マルチスケール法に関しては、変分エントロピーと呼ばれる量と関連付けた最小化問題に結びつける先行研究が行われており、本研究課題も同様の方針によりパラメータ選択を最小化問題に帰着させることを目指している。一方で、衝撃補足項のパラメータについては、安定化有限要素法の安定化パラメータとは別に設定することが主流のように思われるが、一方で教科書のような単純化された説明においては衝撃補足項と安定化項に同一のパラメータを用いることで一纏めに扱ってしまうこともあるようで、やはりパラメータ選択の明確な基準が説明されていないように思われる。こちらについても、何かしらの最小化問題に関連付けたいと考え、さらなる先行研究の調査を進行している段階である。 現在までに主要な先行研究は確認済みであり、数学的な研究への足掛かりをつかんでいる状況であると認識しているが、現在までに本研究による新規の数学解析結果が得られているわけでは無く、昨年度の遅れを取り戻すには至っていないと言わざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、先述の変分マルチスケール法と衝撃補足項の二つについての数学解析を進展させていきたいと考えている。 これら二つについて、主要と思われる先行研究の調査は完了しているが、その結果に基づいて個々の状況においてどのようにパラメータ設定を行うか、という視点で検討を進める。先行研究は抽象的な議論が主であって、その結果を実際の物理現象のシミュレーションに結び付けるまでには段階的な取り組みが必要であると考えている。現時点では、簡単な状況下でのNavier-Stokes方程式への適用を目標とし、関連付けられる変分エントロピーや最小化問題の具体例を構成していきたい。 研究の実施方法についてはこれまでと変わらず、先行研究の調査及び数値実験による検証が主となる。とくに衝撃補足項についての先行研究は、これまでの研究でどのような選択が行われてきたかという経緯について簡単にまとめたい。基本的には機材などは既に十分なものが揃っているという認識でいるが、書籍の購入は予定よりも遅れており、今後の購入を検討している。 数学解析に基づくパラメータの選択基準を与えることができたならば、数値実験により異なるパラメータ選択を用いた際との比較を行う。数値実験の際には、ソースコードが公開されている数値計算用ライブラリの利用と検討しているが、パラメータの構成次第では、特定のライブラリの利用が煩雑な可能性があるため、ライブラリの選定についても少しづつ検討していきたい。
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