研究課題/領域番号 |
21K13844
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 大阪成蹊大学 (2023) 同志社大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
新庄 雅斗 大阪成蹊大学, データサイエンス学部, 講師 (10823081)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | キーワード / 固有値 / 固有ベクトル / 離散可積分系 / QR法 / ツイスト分解法 / Cyclic reduction / Stride reduction / Cyclic Reduction / 保存量 / 漸近解析 |
研究開始時の研究の概要 |
固有値や特異値を求める行列計算は,科学技術計算において,中心的役割を果たす重要な問題である.近年,可積分系と数値計算の関係が見出されており,適切に離散化された離散可積分系に基づいて,行列固有値計算アルゴリズムなどが定式化されている.本研究では,行列に紐づけられた可積分系が行列固有値を保存量とすることに着目し,固有値保存変形を与える可積分系の離散化を提案する.そして,得られた離散可積分系の離散時間極限における漸近挙動や固有値計算に関わる性質を明らかにし,数値計算分野への応用を検討する.
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研究実績の概要 |
近年の情報の大規模化に伴い,データ行列の固有値や対応する固有ベクトルを高速かつ高精度に求める問題は一層重要となっている.今年度では,特異値分解に関連するラックス方程式であるSVDフローを中心に,一般の対称行列が現れるラックス方程式について解析した.その結果,固有値計算法としてよく知られるQR法に原点シフトを導入したシフト付きQR法が,シフトに関する連続極限において,SVDフローに基づいて構成されるラックス方程式と関連づくことを示した.これまで,QR法と可積分系の関係については様々に議論されていたが,この結果はシフト付きQR法もまた可積分系の枠組みで捉えることができることを意味している.また,固有値が高精度に得られたとき,ツイスト分解と呼ばれる特殊な構造をもつ行列を用いた行列積分解を利用して,対応する固有ベクトルを求める方法にツイスト分解法がある.連立一次方程式の解法として知られるCyclic reduction法およびStride reduction法の1ステップを固有値問題の分割のための前処理として,ツイスト分解法に組み込み,分割された一部の問題に対してのみ本処理を行うハイブリッド型アルゴリズムを提案した.本来,Cyclic reductionやStride reductionは問題分割としての機能をもつ変換であるため,並列処理を前提とする運用が自然だが,提案手法は固有ベクトル計算に必要な最低限の演算のみでアルゴリズムを再構築することで,計算精度は同程度に維持しつつ,逐次処理で計算時間の削減に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特異値分解に関連するラックス方程式を起点として,変数の一部が漸近的に固有値へ収束していく離散可積分系と固有値計算法との関係を明らかにしており,また,これまでの行列に関する知見を活かした固有値問題に関する応用研究として,前処理の導入とアルゴリズムの再構築によって,ツイスト分解法の計算量削減にも成功しているため,本研究課題はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
SVDフローに基づくラックス方程式に対して,離散時間発展において固有値を保存するような離散時間変数の導入法には自由度があるため,固有値を保存量としつつも,任意の離散時間において,行列の構造や性質を保存する新たな離散可積分系の導出を試みる.ツイスト分解に基づく固有ベクトル計算法についての研究についても,性能評価など並行して進める.
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