研究課題/領域番号 |
21K13850
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 京都大学 (2022) 筑波大学 (2021) |
研究代表者 |
吉田 恒也 京都大学, 理学研究科, 准教授 (50733078)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 強相関効果 / 開放量子系 / 非エルミート系 / トポロジカル物性 / 強相関系 / 強相関電子系 / 強相関開放量子系 |
研究開始時の研究の概要 |
非エルミート・トポロジカルバンド絶縁体の研究は物性物理におけるホットトピックの一つになりつつある。本研究ではこれまで個別に研究されてきた「強相関効果」と「非エルミート・トポロジー」を結び付けて研究することで、急速に発展しつつあるこの分野で新たな研究の方向性を切り開きたい。 特に、開放量子系におけるトポロジカル秩序相や対称性に保護されたトポロジカル相に焦点を当て研究を行いたい。なお、数値的対角化等の数値シミュレーションも適宜活用する。
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研究実績の概要 |
本年度は、以下の成果をあげた。(i)点ギャップトポロジーにおける分類学のリダクション (ii)近藤絶縁体におけるZ2表皮効果 (iii)判別式に基づく対称性指標 (iv)量子系を越えたトポロジカル現象の開拓。 (i)の「点ギャップトポロジーにおける分類学のリダクション」では、前年度の研究をさらに発展させ、点ギャップトポロジーにおける分類学のリダクションという強相関効果が本質的に効いた現象を世界に先駆けて提案した[T. Yoshida and Y. Hatsugai PRB (2022)]。この結果から、例外点や非エルミート表皮効果の強相関効果に対する安定性も明らかにした[T. Yoshida and Y. Hatsugai PRB (2023)]。 (ii)の「近藤絶縁体におけるZ2表皮効果」では、平衡状態の重い電子系における、準粒子ダンピングに由来した非エルミートトポロジーを議論した。解析の結果、多体ハミルトニアンの時間反転対称性が保護するZ2表皮効果が見られること数値的に実証した[S. Kaneshiro et al., arXiv (2023)]。 (iii)の「判別式に基づく対称性指標」では、前年度に発見した多重例外点の特徴付けの方法を活用して、例外点を系統的に検出できる対称性指標を提案した。具体的には、空間反転対称性・回転対称性がある二次元・三次元系をターゲットに対称性指標を導入した[T. Yoshida et al., PRB(2022); H. Wakao et al., PRB(2022)]。 (iv)の「量子系を越えたトポロジカル現象の開拓」では社会科学や生物の繁殖など、学際的な議論が行われている進化ゲーム理論における、非エルミートトポロジカル現象を解析した[T. Yoshida et al., Sci.Rep. (2022)]。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は非エルミート系のトポロジカル分類学に対する強相関効果を解析した。具体的には、前年度に行ったゼロ次元系の解析をさらに発展させ、トポロジカル不変量に基づいた、点ギャップトポロジーの分類学のリダクションをゼロ次元・一次元系において、世界に先駆けて明らかにした。さらに、平衡状態の重い電子系において、多体ハミルトニアンの時間反転対称性に保護されたZ2表皮効果が発現することを数値的に実証した。さらにこの現象にはスピン軌道相互作用・準粒子ダンピングの両方が効いていることを明らかにした。 上記の成果は当初に計画していたものである。これらの成果に加え、本年度は判別式に基づいた対称性指標の導入を行うことができた。この量を計算することでブリルアンゾーンの高対称点の情報のみから例外点の発現のための十分条件が満たされるか、レファレンスエネルギーの曖昧さ無しに判断可能となる。さらに、進化ゲーム理論で記述される系における、例外点や非エルミート表皮効果の発現を線形化ロトカ-ボルテラ方程式とシュレディンガー方程式の対応関係に着目することで明らかにした。これらの成果は計画当初には想定していなかった成果である。 以上の理由から当初計画していた以上の成果をあげることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は(i)強相関系特有の一次元非エルミート表皮効果や(ii)強相関開放量子系におけるリュウビリアンの非エルミートトポロジーを解析したい。 (i) 強相関系特有の一次元非エルミート表皮効果では、強相関効果が誘起する新規な非エルミート表皮効果を探索したい。本年度の課題では、強相関効果が非エルミート表皮効果を破壊することが明らかになり、この点において強相関効果の解明は部分的に行うことができた。今後はこの研究で得た知見をもとに研究をさらに発展させ、強相関効果が誘起する新規な非エルミート表皮効果の探索を行いたい。 (ii) 強相関開放量子系におけるリュウビリアンの非エルミートトポロジーの解析では、多体のリウビリアンの非エルミートトポロジーを解析し、それがどのようなダイナミクスに反映されるか議論したい。強相関開放量子系の有効的な非エルミートハミルトニアンの解析はいつくか先行研究があるが、量子ジャンプは考慮されておらず、リウビリアンの多体トポロジーを直接解析することで開放量子系のダイナミクスを明らかにしたい。
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