研究課題/領域番号 |
21K13853
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 茨城大学 (2023) 北陸先端科学技術大学院大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
水高 将吾 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (70771062)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 複雑ネットワーク / フラクタル / 次数相関 / 臨界現象 / ランダムグラフ / パーコレーション転移 / 相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
複雑ネットワークはノードとエッジから構成される。ノード対間を結ぶ最小エッジ本数を距離とする複雑ネットワークにおいても、ユークリッド空間に埋め込まれた系と同様にフラクタル構造をもつものがある。フラクタル・ネットワークはエッジ両端ノードのもつエッジ本数(次数)間の相関である隣接次数相関を有する。フラクタル構造はスケール変換不変性を有するため、短スケール構造と長スケール構造は互いに相関していることが予期される。しかし、そのような相関が長距離の次数相関にどのように反映されるかは理解がない。本研究の目的は、複雑ネットワークのフラクタル性と次数相関の間の関係に基礎的な理解を与えることである。
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研究実績の概要 |
本研究は、ネットワークのフラクタル性と次数相関の一般的関係を明らかにすることを目的としている。令和5年度は、次数相関構造が解析的に書き下せるランダムグラフを取り上げ、次数相関とフラクタル性の関係を調べた。対象となるランダムグラフとして各ノードの次数が任意の分布に従うコンフィグレーションモデルから生成されるものを扱った。ランダムグラフがフラクタル性を獲得するパーコレーション臨界点近傍の系の最大連結成分(エッジを介して互いに行き来可能な最大ノード集合)の性質を理論的・数値的に解析した。具体的には、ランダムグラフの最大連結成分のノードのミクロなつながりを指定する次数相関構造を確率分布として数理的に抽出し、確率分布から系のマクロな性質であるフラクタル構造を直接的に導出可能であることを示した。本研究の結果、次数kのノードを起点として半径l以内に含まれるノード数(体積)でフラクタル性を評価した際、短距離スケールと長距離スケールで観測されるフラクタル次元は異なること、すなわち構造的クロスオーバーを示すことを明らかにした。また、クロスオーバーが起こる距離スケール(クロスオーバー距離)は起点となるノードの次数kに依存し、クロスオーバー距離は起点ノード次数の増加関数であることを明らかにした。これらの結果は大規模数値計算を用いて数値的にも検証された。次数相関の考慮なしにフラクタル性を評価している従来研究は、長距離スケールでのフラクタル次元のみを与える。この点で、本研究での次数相関構造からのフラクタル解析は、従来研究よりも解像度の高い結果を与えているといえる。また、本研究はネットワークの次数相関構造から、そのネットワークが有する他の構造的性質を抽出することに成功した初めての例であり、本課題の目的の一部を達するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の研究成果は本申請課題で解明を目指していたテーマの一つであり、順調に成果が出ているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、特定のモデルであるランダムグラフの次数相関から系のフラクタル性を直接導出できることを示した。この一般性に関して、他のフラクタル・ネットワークモデルおよび実ネットワークの次数相関構造を数値的・解析的に調べることで検証を進める。また、ノード間のミクロなつながりを指定する次数相関がフラクタル構造を除く他の構造的性質とどのように関連しているのかについてモデル・ネットワークおよび実ネットワークから探る。
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