研究課題/領域番号 |
21K13854
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
矢野 力三 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80830356)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 磁性トポロジカル絶縁体 / トポロジカル物質 / ゲート制御 / 単結晶育成 / 物質探索 / マヨラナ粒子 / 超伝導近接効果 / 微細加工超伝導接合 / 超伝導接合 / 表面・エッジ状態 / 磁気輸送特性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は自分自身が反粒子とされているマヨラナ粒子の実証に向けた基盤技術の確立を目指している。マヨラナ粒子はその存在自体が理論的な大きな注目を浴びているが、トポロジカル量子コンピュータへの応用も期待されている工学的にも重要な粒子であるが、この粒子の存在を確立させた実験がいまだない。そこで本研究は、特に磁性に注目し、このマヨラナ粒子の出現の制御や空間的な制御が可能な基盤技術の確立を目指している。 そのために、比較検証が可能な理想的物質の探索から始め、物質を組み合わせる接合技術の確立までを行う。とくに、三次元的に空間制御が可能な接合は難しく、その技術的開発に取り組んでいく。
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研究実績の概要 |
本研究では磁性トポロジカル絶縁体を使った物性制御を試みている。今期ではFe-BiSbTe2Se (Fe-BSTS)を微細加工して輸送特性を評価と、新たなる磁性ドープトポロジカル絶縁体の探索を行った。 昨年度にFe-BSTSが磁性トポロジカル絶縁体として有望であることを報告してきた。今回はこの物質の微小結晶デバイス(電極間間隔は数μm程度)を作製して輸送特性の評価を行った。バルク結晶で確立してきたイオン液体を使った表面化学ポテンシャル制御と、今回はさらに、結晶の基板側にも固体ゲートを使用して下側の表面化学ポテンシャル制御も試みた。Fe-BSTSは微小薄片化したことで表面からの寄与率が支配的になり、高磁場で抵抗が振動する現象を観測した。当初、これはフェルミ面の大きさを反映したShubnikov de Haas(SdH)振動かと思われたが、磁場の逆数1/Bではなく磁場Bに対して周期的であることと、ゲート依存性に乏しいことから、別の量子振動である可能性を検討している。対比実験として非磁性トポロジカル絶縁体Sn-BiSbTe2S (Sn-BSTS)を使用して同様の実験を行ったところ、こちらでは量子ホール効果や通常のゲート依存性をもつSdH振動と思われる磁場中の抵抗変化を観測した。このことからFe-BSTSでの磁気振動は別の磁気振動現象である可能性が高く、その一つの候補として普遍的ゆらぎ(UCF)が挙げられる。これは電極間での複数の干渉パスが存在することで生じる現象で、非磁性トポロジカル絶縁体においては観測例がある。一方でこの現象は磁性が存在する状況では出現しにくいことが知られていることから、今後さらにこの振動の起源について詳細に調べる必要がある。そのため、より磁化が大きい磁性トポロジカル絶縁体の開発のためにも今期ではさらに新たな候補物質の探索を結晶の作製方法から見直して試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では大きく分けて①磁性とトポロジカル性の有無で異なる特性を持つ物質の開拓、①磁性トポロジカル絶縁体そのものの評価と状態制御手法の確立、②超電導接合を作製し実際にマヨラナ粒子などの特異な粒子のっ存在や現象の観測の3つの実験種別に大別できる。 ①に関しては、新たな磁性トポロジカル絶縁体の候補物質の探索を新たに行い、いくつか有望そうな系統を見出すことができた。一方で、同一組成、同一結晶構造で完全ではなくともトポロジカル性の有無の作り分けが可能な物質開拓の戦略が一つがうまくいきそうな兆候が得られているため、引き続きこちらも継続して開発をしていく。 ②に関してはモスクワ工科大学(ロシア)との共同研究において角度分解高電子分光(ARPES)と輸送特性の両方から評価していく計画であったが、本年度に起きた地政学的な問題なため頓挫してしまった。一方で、微細片をつかっての評価方法がある程度成熟しつつあり、イオン液体を使用したゲート制御と固体ゲートを使用したゲート制御の2つの手法を同時に行う技術をほぼ確立させた。 ③超伝導接合に関しても共同研究を進めてきており超伝導量子干渉計(SQUID)をFe-BSTS上に作製させたとき振る舞いなどの評価を行ってきたが頓挫してしまった。②で得られた知見をもとに、これまで作製してきた磁性トポロジカル絶縁体の超伝導接合の再評価も行いこれまでわかっていなかったコンダクタンス測定における特異なピーク構造などの起源や超伝導接合中の近接効果について理論家との議論を深めながら調べている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として接合作製技術の開発と結晶開発の2つの観点で示していく。 今後の磁性を用いた空間的な表面状態制御に向けて、接合作製技術としては、現在のヘキ開して微小片への電極作製という技術以外の接合作製方法の開拓が必要である。そのためヘキ開性を持たない結晶を使用しても微小な電極作製が作製できるような技術の開発を行っていく。ヘキ開した試料に対しての接合技術においてもより微細な数十nmオーダーでの接合作製の安定した手法確立や、ゲート制御で物性制御がしやすい構造・手法の開発を行っていく。 一方で、結晶作製に関しては特に磁性トポロジカル絶縁体の新たなる候補物質の探索を行っていく。現在着目しているFe-BSTSのもととなるBSTSに対しての磁性元素ドープに関しては報告例が多くなく、また、最も批判として想定されるFe-Seの化合物を含まないような物質系で磁性トポロジカル絶縁体の確立を目指していく。また、磁性の有無と、トポロジカル性の有無の比較を容易にするために、その組成周辺でトポロジカル―非トポロジカルの転移をもつような物質組成の開拓を目指していく。
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