研究課題/領域番号 |
21K13855
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
|
研究機関 | 早稲田大学 (2023) 近畿大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
金子 隆威 早稲田大学, 理工学術院, 主任研究員 (10881211)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
|
キーワード | テンソルネットワーク / 量子多体系 / 非平衡系 / 冷却原子系 / 量子シミュレータ / Rydberg原子 / 量子スピン系 / 時間発展 |
研究開始時の研究の概要 |
テンソルネットワーク手法は、量子多体系の基底状態を計算する高精度な数値計算手法の1つである。近年、この手法が孤立量子系や散逸を伴う開放量子系の実時間ダイナミクスの計算にも適用され始めたが、空間1次元系への応用例が多く、空間2次元以上の系はごく簡単な問題への適用例しかない。本研究では、実験によるアナログ量子シミュレーションの精度を古典計算機の数値シミュレーションで確認することを目的とし、テンソル積状態・projected entangled pair stateを用いて空間2次元系の実時間ダイナミクスを調べる。手法の適用限界を数値的に検証し、数値シミュレーションと実験結果を比較する。
|
研究実績の概要 |
[最終年度に実施した研究の成果] 最終年度では、光格子中の冷却原子気体のダイナミクスの実験で特異な量子現象を観測する方法を提案した。Rydberg原子集団のダイナミクスの実験で最初に観測された、非可積分系であるにもかかわらず熱平衡化が極めて遅い量子状態(量子多体傷跡状態)を三体ロスの強いBose-Hubbard系で実現できることを示し、それを断熱操作で実験的に用意する方法を提唱した。この成果はPhysical Review A誌に出版された。また、量子超越性の文脈でボゾンサンプリングが注目されているが、非エルミート開放系のボゾンサンプリングのダイナミクスにおけるサンプリングの複雑性が切り替わるような相転移現象の有無を、エンタングルメントエントロピーと行列積状態を用いたテンソルネットワーク法のボンド次元に着目して検証した。この成果は日本物理学会で発表され、論文投稿準備中である。
[研究期間全体を通じて実施した研究の成果] 研究期間全体を通じて、これまでの数値計算手法では困難だった、空間2次元の量子系の実時間ダイナミクスをprojected entangled pair state・テンソル積状態を用いて計算する際の要点を明らかにすることができた。現状では数学的にタイトなLieb-Robinson限界(量子情報の伝播速度の上限)が知られていない量子系に対して、数値的にLieb-Robinson速度を見積もった。今後、この結果は数学的に厳密なLieb-Robinson限界を導出する際のヒントになる。また、種々の量子系のクエンチダイナミクスの数値シミュレーションで得た時間依存相関関数は、今後のアナログ量子シミュレータの実験データの妥当性を評価する際に役立つ。
|