研究課題/領域番号 |
21K13859
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
蘆田 祐人 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00845464)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 量子多体系 / 非平衡開放系 / 量子光学 / 統計物理 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、外界環境と強く結合した非摂動開放系を解析するための理論手法を開発し、その応用により新奇な量子相や非平衡ダイナミクスを解明することである。近年大きな進展があった、非エルミート系に代表される「摂動領域の開放系」とは対照的に、実験的にも重要になっている「非摂動効果が本質的となる開放系」に着目して研究を進め、新たな物性/光物理学のフロンティアを拓く。
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研究実績の概要 |
前年度の我々の研究で、共振器量子電磁力学系において、電磁場モードが単一でかつ長波長近似が成立する場合に、結合強度が強い極限で両者の量子もつれを漸近的に解けるユニタリ変換の構成に成功していた。第二年度である今年度は、この理論解析を、導波管量子電磁力学系と呼ばれる、連続的かつ複数の量子電磁場モードが物質と強く結合した物理系に拡張した。これにより、非摂動領域に特有な「連続スペクトル中の束縛状態」と呼ばれる特異な固有状態が生じることや、光物質束縛状態の新奇な非平衡量子ダイナミクスが発現することを見出した。さらに、この理論手法を統計・物性物理の基礎的課題であるジョセフソン接合系の量子散逸相転移の問題に応用し、非摂動的な解析を行うことに成功した。特に、数値的繰り込み群と汎関数繰り込み群という二つの独立な非摂動繰り込み群の手法を用いることで系の基底状態の相図を明らかにした。その結果、従来の摂動的な結果とは異なり、今まで非有意と考えられてきた項の非摂動効果により、絶縁体相が実現するパラメータ領域が強く制限されることを明らかにした。また摂動的な開放系である非エルミート系に関しても、例外端状態を非線形領域や3次元系に拡張するなど、一定の新しい成果が得られた。統計物理・機械学習の研究においても今年度は進展があった。特に、実験グループと協力することで、ナノダイヤモンド中の窒素空孔中心を用いた磁場測定の確度を向上することに成功した。また、深層強化学習を用いた熱平衡量子純粋状態の準備に関する研究も行った。以上の成果は7編の論文としてまとめ、 Physical Review Letters 誌などから出版され、また国内外での招待講演やセミナーなどを通しても発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、当初想定していた計画である導波管量子電磁力学の束縛状態やダイナミクスの解析にとどまらず、ジョセフソン接合系の量子散逸相転移という物性・統計物理の基礎的問題の解決も行うなど、研究の新しい展開を行うことに成功した。また、実験グループと協力することで当初は想定していなかった重要な成果も得られた。よって、当初の計画以上に研究が進展していると判断するのが妥当である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度および本年度に構築した理論的枠組みを用いることで、来年度は共振器物質系で具体的にどのような新たな物理現象や物性制御の可能性が開拓されるかを明らかにする。特に、トポロジカル物性や捻り二層物質の磁性制御、さらにはヘテロ構造を用いた超強結合領域の実現可能性などについて研究を行う予定である。一方で、これまでの2年度で着実な成果が得られている統計物理や機械学習に関する研究についても、開放系の物理の視点から新しい方向性を見出すため、探索的な研究を行う。
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