研究課題/領域番号 |
21K13864
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
浅川 寛太 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50817046)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | スピン偏極 / アルカリ金属 / 強磁性体 / 光誘起脱離 / 表面物理学 / 表面 |
研究開始時の研究の概要 |
強磁性体表面の磁性は、気体原子の吸着によって変化することがある。これは、気体原子の吸着・脱離の際に、表面・吸着原子間でスピン角運動量の移行が起こっていることを意味する。従って、強磁性体表面に吸着した原子を光誘起脱離によって非熱的に脱離させた場合、表面からスピン角運動量を受け取り、脱離原子のスピンが偏極することが予想される。本研究ではこれを立証し、磁性体表面への吸着を用いた新たなスピン偏極原子の生成方法の開発や磁性体表面の磁気構造解明などに役立てる。
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研究実績の概要 |
本研究では、Fe3O4(001) 表面に吸着したRb 原子を紫外光を用いて光誘起脱離させ、その脱離量や速度分布、脱離原子のスピン偏極度を測定し、その結果を用いて光誘起脱離のメカニズムを解明した。試料にはMgO表面に製膜した厚さ20 nmのFe3O4薄膜を用いた。成膜は、電子ビーム蒸着法を用いた。成膜後、大気中で磁化し、測定チャンバーに移動後、酸素雰囲気中で加熱することで不純物除去を行った。薄膜の評価にはX線光電子分光法を用いた。光誘起脱離用の光源にはQスイッチによってパルス化されたNd:YAGレーザーの3倍波(波長355 nm)を用い、また、脱離原子の検出にはRb D2遷移線に周波数ロックした波長780 nmの半導体レーザーを用いた。本研究によって得られたRb脱離量と平均脱離原子速度のRb 吸着量依存性から、Fe3O4表面からのRbの光誘起脱離はある閾値以上の吸着量でのみ起き、また、脱離のメカニズムは熱的であることが明らかになった。また、測定したすべての吸着量領域にて、脱離原子のスピン偏極度は、Fe3O4(001) 表面のフェルミ準位における電子スピン偏極度より小さいことが明らかになった。これらの結果は、光誘起脱離が多層吸着領域でのみ起こり、脱離するRb 原子がスピン偏極した表面から直接電子を受け取らないことを意味している。また、以上の結果は、本研究で開発した手法により、高い分解能で脱離原子のスピンを測定できることが可能になり、これまで明らかになってこなかった、触媒反応におけるスピンの役割の解明などに貢献することが期待される。
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