研究課題/領域番号 |
21K13878
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中埜 彰俊 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (50842613)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 熱電半金属 / 高移動度 / 低次元系 / 層状遷移金属カルコゲナイド / 擬一次元物質 / 電子正孔系 / 遷移金属カルコゲナイド / 層状カルコゲナイド / 低次元 |
研究開始時の研究の概要 |
最近、申請者は層状カルコゲナイドTa2PdSe6が15 Kで巨大な熱電応答を示すことを発見した。本研究ではその起源解明と制御を目指す。室温以下で高い性能を示す熱電物質は限られており、またそれらはバンドギャップの小さな縮退半導体や強相関金属が主であった。それに対してTa2PdSe6は半金属であり、何らかの起源により電子と正孔の熱電応答が相殺しない“非補償”な電気伝導が実現していると考えなければこの巨大応答は説明できない。本研究では、異種元素を置換した一連の単結晶における熱電特性計測に基づき機能性の発現機構を実験的に明らかにし、半金属を用いた低温熱電という新しい指針を提案する。
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研究成果の概要 |
本研究では、申請者が見出した半金属Ta2PdSe6が低温で示す巨大熱電電力因子の起源について、放射光X線回折実験、および元素置換効果の観点から調べた。ゼーベック効果の測定から、室温では電子、低温では正孔が支配的なキャリアになることが示唆されるが、結晶構造は室温と低温でほとんど変化がなく、この変化はバンド構造起因ではないことが分かった。申請者の構築した簡易的な2キャリアモデルでTaサイトにNbを置換した際の効果を調べると、電子に対する正孔の移動度の大きさをパラメータとして定量的に解析可能であることが分かった。このことは、移動度をパラメータとした新しい低温用熱電物質の設計指針を提示している。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究成果の学術的意義は、Ta2PdSe6という半金属物質が従来の半導体熱電材料と桁違いに大きな熱電性能を示すこと、さらにその性能が移動度に起因した"非補償性"という新しい設計指針にあることを示したことである。従来の熱電物質開発においては、超伝導デバイスの電子冷却や冷熱の利用が期待される低温(T < 200 K)における熱電物質の研究はあまり進んでいなかったが、この研究成果により、これまでほとんど手つかずで残されていた半金属物質群の鉱脈からより有望な物質の発見につながるかもしれない。将来的には超伝導素子の局所冷却・無冷媒動作などに革新的な影響を与えることも期待される。
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