研究課題/領域番号 |
21K13883
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成田 秀樹 京都大学, 化学研究所, 特定助教 (80846709)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 超伝導 / ノンコリニア磁性 / 強相関電子系 / スピントロニクス |
研究開始時の研究の概要 |
磁性による超伝導の制御は、低消費電力で動作する超伝導量子コンピュータの応用に向けての重要な技術であるが、そのためには電子間斥力に起因する磁性を用いて、電子間引力を起源とする超伝導を制御する必要がある。 本研究では、ノンコリニア(非共線的)な磁気構造におけるヘリシティに関連する自由度が、巨視的位相の制御、すなわち超伝導状態の制御に有効であることを実証する。
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研究実績の概要 |
本年度はノンコリニア(非共線的)な磁気構造と超伝導が共存する試料作製に向けて、強磁性体、超伝導体、重金属を含む多層膜試料の作製を行い、輸送特性や磁化の測定から超伝導特性の解明を行った。 前年度に作製した極性強磁性/超伝導多層膜では、強磁性体の磁化と電流方向に依存して、臨界電流に非相反性が生じる超伝導ダイオード効果をゼロ磁場において観測することに成功した。しかし、臨界電流の磁場依存性には、強磁性体の磁化に依存した磁気ヒステリシスが現れ、非相反臨界電流は符号反転を伴う複雑な磁気ヒステリシスを示すことが明らかになった。この複雑な非相反臨界電流の振る舞いは、磁気ドメインの複雑さを反映している可能性があり、さらに磁性層の膜厚や組み合わせを最適化していくことがノンコリニア磁性を用いた超伝導の制御に必要であった。 本年度は膜厚調整に加え、磁気結合を変調する中間層や隣接する層にスピン軌道相互作用の大きいPt等の重金属を挿入することで、ジャロシンスキー・守谷相互作用を顕在化させてノンコリニア磁性の制御を目指した。強磁性体、超伝導体、重金属を組み合わせた試料において、強磁性と超伝導が共存する試料の作製に成功した。また、複雑な磁気状態の制御を行うことなく、強磁性体の磁化の振る舞いと対応する非相反臨界電流の磁気ヒステリシスを観測し、巨大な臨界電流の非相反性に由来するゼロ磁場における超伝導ダイオード効果の実証に成功した。 この結果は、超伝導体中のクーパー対に強磁性体による交換磁場が作用していることを示唆している。またスピン軌道相互作用の大きい重金属を挿入することが、強磁性体の磁気異方性だけでなく超伝導特性の制御にも有効であることを解明した。 以上の研究成果を論文にまとめ、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画通り、ノンコリニア磁性と超伝導が共存する試料の作製に向けて試料作製条件の最適化を行った。その上で、極性構造に加え、強磁性体、超伝導体、重金属の性質を組み合わせることで、磁性による超伝導の制御と超伝導電流の非相反性の制御を実現し、非相反性から超伝導特性を評価できる指針を得たことから本年度の研究計画以上に進展して円滑に推進していると言える。 本結果についてまとめた論文も現在投稿中であり、成果発表への準備も着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる次年度も、引き続きノンコリニア磁性と超伝導が共存する最適な試料を探索し、ノンコリニア磁性とスピン軌道相互作用を顕在化させた試料作製に取り組む。また超伝導ダイオード効果の微視的なメカニズムの解明、ジョセフソン接合素子における巨視的位相の変化の証拠となる臨界電流密度の温度依存性に現れるディップ構造を解明することで、ヘリシティを利用した巨視的位相の制御を目指す。
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