研究課題/領域番号 |
21K13890
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
赤田 圭史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50815892)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | レオロジー / 非ニュートン流体 / 小角散乱 / コロイド / コロイド溶液 / 小角X線散乱 |
研究開始時の研究の概要 |
一部のコロイド懸濁液では,せん断応力を印加すると粘度が増大するダイラタント特性を示す。本研究ではこのメカニズムの解明のために,せん断応力を印加しながらの動的な観察を試みる。独自開発したX線透過溶液セルを使用し、放射光を利用した先端計測技術により、リアルタイムでのダイラタント機構の観察を行う。せん断を加えた時のコロイド粒子のクラスター化や,添加物の構造化をリアルタイム観察し,理論計算と比較することで,ダイラタント現象を担うコロイド粒子の凝集化プロセスを学術的に解明する。
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研究実績の概要 |
多くのコロイド懸濁液はせん断に対して非ニュートン流体的な応答を示す。特にせん断応力を印加すると粘度が増大する特性はシアシックニング(ダイラタント)と呼ばれる。この現象はパイプの詰まりの要因となる一方、衝撃で硬化する特徴を活かした衝撃吸収材等への応用も見込まれてており,特性制御のための現象の機構解明が望まれる。 シアシックニングはせん断を加えた動的なプロセスで発生するので,応力印加と物性計測を同時に行う必要がある。本研究ではX線透過レオメーターセルを使った粘度と小角X線散乱(SAXS)と極小角X線散乱(USAXS)の同時測定(Rheo-SAXS/USAXS)によって,リアルタイム構造観察によるシリカとポリマーの凝集プロセス解明に取り組んだ。実験の結果、粘度増加に伴いシリカが凝集した楕円形のfloc構造が形成され,流れに平行に整列し、粒子間隔も流れ方向に圧縮されていることが判明した。これはダイラタントの発生において,ポリマーによるシリカ粒子間の架橋が重要な要因であることを表す。 本研究ではRheo-SAXS/USAXS測定に対してトリガーシステムを組み合わせることで、高速な時間分解測定を可能にした。この技術開発はこれまで未解明であったシアシックニングが発生する過渡現象を明らかにするものである。 さらにピエゾ動作する自作せん断セルも開発し、μLの微小量サンプルに対して、せん断同時計測が可能になった。小角中性子散乱(SANS)から凝集構造の元素同定を、液中AFMからシリカ粒子の周囲の水和構造を明らかにし、ダイラタント現象の多角的な計測を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シアシックニング流体にはいくつかの種類がある。一つは低濃度のコロイド粒子と高分子溶液からなる系である。衝撃でゲル化することからshake-gelと呼ばれ、コロイド粒子と高分子鎖の凝集でシアシックニングが発生すると考えられている。もう一つは高濃度のコロイド粒子と低分子量の溶媒からなる系であり、濃厚系と呼ぶ。この系では粒子間の接触による摩擦でシアシックニングが発生すると考えられている。 初年度は円筒型レオメーターを使用して,SPring-8 BL40XU/BL19B2ビームラインにおいて、shake-gelのゲル化過程におけるRheo-SAXS/USAXS測定を実施した。2年目ではこれらの結果を詳細に解析し、シミュレーションの結果と比較して、ゲル化の構造を明らかにした。ダイラタント現象におけるポリマーの重要性は,液中AFMを用いたシリカ粒子の周囲の水和構造からも測定でき、シリカ表面へのポリマー吸着を明らかにした。J-PARC BL15 TAIKANのSANS測定では元素選択でRheo-SANS測定を行い,スペクトルの大部分がシリカに由来することを突き止めた。 SAXS/USAXSの時間分解測定では、高速シャッターと検出器、高速カメラを組み合わせたトリガーシステムを構築した。この技術開発によって、USAXSで10ms、SAXSで1msの時間分解Rheo-SAXS/USAXSの測定を実現した。Shake-gel系ではゲル化過程における時間発展を明らかにした。濃厚系ではせん断から数秒の短い時間でシアシックニングが発生する過渡現象の解明にも取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までにRheo-SAXS/USAXSの技術開発、1 ms時間分解のRheo-SAXS測定と、10 ms時間分解のUSAXS測定を実現した。高速シャッターを持ち込み自作の制御プログラムでビームラインの測定系と連動させて入射光を切り出すことで,10 ms以下の時間スケールでのストロボ撮影に成功している。この手法を用いてシアシックニング流体に対する測定を行い,シアシックニング相転移までの間に起こる内部の構造変化の時間発展を調べている。 平行して微小液体に対してシアシックニングを発生させるピエゾデバイスの作製を進めており、これを利用して装置の小型化、サンプルの微量化が実現できる。このデバイスで回転式レオメーターより早いせん断速度が印加可能になり、透過率の低いX線吸収分光の測定も可能になるので、今後はX線吸収実験を実施予定である。
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