研究課題/領域番号 |
21K13901
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
|
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
釼持 尚輝 核融合科学研究所, 研究部, 助教 (80781319)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
|
キーワード | 核融合 / プラズマ物理 / プラズマ制御 / 内部輸送障壁 / エッジAI / 非局所輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
核融合炉実現のために内部輸送障壁の形成とその制御が重要かつ効果的であるが、輸送障壁の形成機構の理解が不十分であるとともに、形成の時間スケールなどは不明であった。 本研究では、核融合炉実現のために重要な高性能プラズマの分布制御手法を確立するため、 (1)輸送障壁の位置決定機構を明らかにし、 (2)深層学習の手法を応用することで、位置決定に重要な物理量の制御を介して圧力分布を実時間制御するエッジAIシステムの開発・実証を行う。 本研究は乱流の非線形効果、マルチスケールの構造形成など科学の文脈の中で重要な位置づけをもつと同時に、炉心プラズマ設計という研究開発の根幹に大きなインパクトを与えることができる。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、核融合炉実現のために重要な高性能プラズマの高速かつ高精度な分布制御手法を確立するため、(a)輸送障壁の位置決定機構を体系的に明らかにし(輸送障壁の位置決定機構の解明)、(b)位置決定に重要なプラズマパラメータの制御を介してプラズマ圧力分布を実時間制御するシステムを開発・実証する(輸送障壁の位置制御手法の開発・実証)ことである。 令和5年度は(a)及び(b)に関連してそれぞれ以下の研究を実施した。 【a. 輸送障壁の位置決定機構の解明】大型ヘリカル装置(LHD)における変調電子サイクロトロン加熱実験により、熱パルスが伝播中に非拡散的な高速応答を示し、その時間幅の縮小に伴って速度が増加することを明らかにした。また、パルス時間幅が数ミリ秒から数十ミリ秒の範囲において、雪崩モデルの描像と一致する温度勾配と乱流の同時伝播が観測されている。これらの結果は、熱と乱流のパルスが時空間的に局所化するほど、プラズマの平衡状態からの逸脱が大きくなり、伝播速度が速くなることを示している。本研究は、定常的に非平衡状態を維持する必要のある将来の核融合炉にとって重要な知見を与える。今後、この知見を基に、プラズマの温度の時間・空間的に高精度な制御手法の開発が期待される。本研究成果は国際誌投稿中であり、2023年度吉川允二記念核融合エネルギー奨励賞優秀賞を受賞した。 【b. 輸送障壁の位置制御手法の開発・実証】京都大学村上定義教授、森下侑哉助教らが開発したデータ同化システムASTIを、本研究で開発を進めているエッジAIを用いた加熱・粒子補給制御システムと組み合わせてLHDプラズマの温度・密度制御に適用することに成功し、国際誌に発表し、核融合科学研究所-京都大学-統計数理研究所にて共同記者会見を行い国内外の各種メディアに掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の当初目標は、 (a)LHDプラズマ実験において、近年開発された高性能な計測群により、e-ITBプラズマにおける多様な物理量の計測情報を元に、輸送障壁の位置決定機構に関する知見を深め、圧力分布の制御により効率的なアクチュエーターを探索すること、及び(b)開発・動作検証を進めた電子サイクロトロン加熱制御システムを、LHD実験に適用してプラズマ圧力分布の実時間制御手法を実証することであった。(a)に関しては、加熱条件や詳細計測を組み合わせた先進的な実験を行うことで、定常的に非平衡状態を維持する必要のある将来の核融合炉にとって重要な知見を与え、国際誌に投稿した。 (b)に関しては、LHD実験に適用し分布制御の実証を行い、国際誌に発表し記者会見を行った。上記2点の研究成果により、本研究課題は概ね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度に開発・実証したプラズマ制御システムを改良・拡張しLHD実験においてプラズマ制御性能を実証する。更に、本システムを活用して高精度にプラズマ分布を制御することで、輸送障壁の位置決定機構の知見も深める。 本研究課題の成果をまとめ、ヨーロッパ物理学会で報告し国際誌に論文投稿を行う。
|