研究課題/領域番号 |
21K13920
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
玉岡 幸太郎 日本大学, 文理学部, 助教 (30848354)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 超弦理論 / 量子情報 / ホログラフィー / AdS/CFT対応 / 量子エンタングルメント |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、近年超弦理論の考察から新たに発見された量子情報量たちを駆使することで、(1) ホログラフィー原理に対する知見を深める、 (2) より広範な文脈での応用可能性を明らかにする、の2点を目指す。したがって、重力双対を持つ場の理論にとどまらず、さまざまな量子多体系に着目する。また、以上の目的を達成するために、これらの量子情報量そのものの基本的な性質の研究も行う。
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研究実績の概要 |
今年度の研究成果は、大きく分けて (1) pseudo entropy における増幅現象の機構の理解、(2) 量子重力における対称性の破れの量子情報量的な理解の2つに分けられる。
(1) Pseudo entropy (擬エントロピー)と呼ばれる近年新しく発見された量子情報量は、仮想的な中間状態から蒸留できる最大エンタングルメント状態の数という物理的解釈が与えられる。また、この擬エントロピーは前年度の研究で2つの状態が異なる量子相に属しているかどうかを検知できることが分かった。以上の事実において、通常のエンタングルメント・エントロピーでは起こり得ない「増幅」と呼ばれる現象が重要な役割を果たす。この増幅が弱値の増幅と本質的に同じであることを指摘し、さまざまな量子系で擬エントロピーがどのような状況で増幅現象を起こすかを系統的に調べた。特に、元の状態たちが縮約遷移行列から定義できるモジュラー・ハミルトニアンを一般化した量の右or左側固有状態になっているかどうかが重要であることを明らかにした。さらに、重力双対を持つ場の理論において非摂動効果が無視できる領域において増幅現象が起きないことが明らかになった。
(2) Symmetry resolved entropy と呼ばれる情報量をもとに、ブラックホールの蒸発過程において、グローバル対称性及びその破れがどのような役割を果たすかをPage曲線を議論する際に用いられる有限次元のトイモデルを用いて解析を行った。特に、対称性の破れの効果はPage時間以降に顕著になることが分かった。また、先行研究におけるUVカットオフの取り扱いを再考する必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標である新しい量子情報量の応用及びホログラフィー原理への示唆に対して、擬エントロピー特有の現象である「増幅」という観点から、基礎的な知見が得られた。また、symmetry resolved entropy に関しては当初の全く想定していなかった方向性の研究であり、量子重力・ブラックホールにおける対称性の役割について、新しい知見を得ることができた。一方、昨年記載した今後の研究の推進方策で述べたホログラフィーにおける統計平均の役割に関しては、技術的な理由でやや進展が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
擬エントロピー及び混合状態に対する量子情報量に関して、これまでの研究を踏まえてAdS/CFT対応やその一般化に対する示唆・応用を引き続き追求する。具体的には、それぞれについてバルクの時空構造のプローブとしての新たな応用可能性や線形性の問題などについて取り組む予定である。また、新たに研究を始めた、量子情報量から得られる対称性への示唆についてもトイモデルではなくより実際的なCFTや重力理論における解析を行う予定である。
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