研究課題/領域番号 |
21K13924
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
富樫 甫 東北大学, 理学研究科, 助教 (70733939)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 核物質 / 状態方程式 / ニュートリノ反応 / スピン偏極 / 超新星爆発 / 中性子星 / 変分法 / ニュートリノ |
研究開始時の研究の概要 |
近年構築された現実的核力に基づく超新星爆発計算用核物質状態方程式の計算手法を拡張し、スピン偏極した一様核物質の熱力学量を求めることによって、状態方程式と自己無矛盾なニュートリノ反応率の計算を行う。当該研究では、従来の状態方程式と同様に、得られた反応率を広範囲の核物質密度・陽子混在度・温度に対する数値テーブルとして完備し、重力崩壊型超新星爆発の数値シミュレーションに適用することで、原子核物理の情報が超新星爆発メカニズムに与える影響を系統的に調べる。
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研究実績の概要 |
重力崩壊型超新星爆発の数値シミュレーションでは、核物質の状態方程式と並んで、核物質内部におけるニュートリノ反応率が原子核物理に関連する重要なインプットデータのひとつとなる。本研究課題では、近年我々が構築した現実的核力に基づく超新星爆発計算用核物質状態方程式と自己無矛盾なニュートリノ・核子散乱の散乱断面積を求め、実際の超新星爆発シミュレーションへと適用することを目指す。さらに、従来の状態方程式テーブルと同様に、得られた散乱断面積を数値データのテーブルとしてweb上で公開することも予定している。 2022年度の研究では、昨年度に定式化した任意のスピン偏極率における絶対零度一様核物質(絶対零度スピン偏極核物質)に対するクラスター変分法を利用して、様々な密度・陽子混在度・スピン偏極率における一様核物質のエネルギーを計算した。そして得られたエネルギーの数値データから、熱力学関係式によって絶対零度一様核物質のスピン磁化率を導出した。当該研究によって得られたスピン磁化率は、超新星爆発現象における典型的な密度・陽子混在度において妥当な振る舞いを示し、量子モンテカルロ計算などの他の量子多体計算で得られた結果とも定量的な一致を示すことが確認された。 さらに2022年度は、絶対零度スピン偏極核物質に対するクラスター変分法を有限温度へと拡張し、任意の温度におけるスピン偏極核物質の自由エネルギーを計算することも可能になった。この拡張では、Schmidt-Pandharipandeの手法を踏襲し、スピン上向きと下向きの陽子及び中性子それぞれに対応する4つの平均占有確率を導入して定式化を行った。当該手法によって得られた有限温度スピン偏極核物質の自由エネルギーは、典型的な温度において妥当な振る舞いを示すことも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
任意のスピン偏極率を持つ一様核物質に対して、有限温度における自由エネルギーまで計算することが可能となり、典型的な温度における熱力学量も妥当な振る舞いを示している。さらに絶対零度一様核物質に対しては、熱力学関係式を用いてスピン磁化率まで計算することができており、その数値計算結果は他の量子多体計算による結果と定量的な一致も示している。以上の理由により、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、前年度に構築した有限温度スピン偏極核物質の自由エネルギーに対する数値計算プログラムを利用して、様々な温度・密度・陽子混在度・スピン偏極率における自由エネルギーの数値データを用意する。広範囲の自由エネルギー及び関連する熱力学量を完備するために、数値計算プログラムの高速化・高精度化に従事するとともに、高性能ワークステーションやスーパーコンピューターを利用した大規模計算にも取り組むことを予定している。なお、数値計算に膨大な時間がかかってしまう場合には、まずは超新星爆発シミュレーションで必要となる最低限の領域だけをカバーしたテスト計算用テーブルのみを作成することも検討する。 そして、上記の手続きによって得られた絶対零度及び有限温度におけるスピン偏極核物質の熱力学量を用いて、超新星爆発計算で現れる様々な密度・陽子混在度・温度における一様核物質のスピン応答関数を導出する。この際には、現象論的模型に基づくHorowitzらの先行研究と我々の結果を比較することにより、スピン応答関数に対する核力の効果を詳細に議論する。
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