研究課題/領域番号 |
21K13925
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 木更津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平井 隼人 木更津工業高等専門学校, 基礎学系, 講師 (40879417)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 量子電磁力学 / 赤外発散 / 漸近対称性 / 散乱振幅 / ゲージ対称性 / ゲージ理論 / 重力理論 |
研究開始時の研究の概要 |
散乱行列(S行列)は、散乱の前後の量子状態の間の遷移振幅から成る行列であり、素粒子の散乱解析における基本的な量である。しかし、量子電磁力学、量子色力学などのゲージ理論や重力理論では、S行列の値が無限大に発散してしまう「赤外発散の問題」が生じる。この問題は電磁気力・強い力・重力が長距離力であるという特殊性に起因する。 本研究ではゲージ理論と重力理論において、長距離相互作用の効果を適切に取り入れた散乱状態を用いることで赤外発散の生じないS行列に基づいた散乱解析の手法を構築し、従来の散乱解析の簡便化、予言精度の向上、また、長波長のホーキング輻射が持ち去る量子情報の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、量子電磁力学において赤外発散の生じない散乱行列に基づいた散乱理論を発展させた。 従来の計算法では電子のフォック状態を散乱状態として用いていたが、私たちは電子に加えて光子のコヒーレント状態(光のドレス)を合わせた「ドレス化状態」を用いて散乱振幅を計算した。私たちは一般的なドレス化状態に対する散乱振幅と散乱断面積を計算することで、赤外発散が生じないための光のドレスに対する条件を導出した。さらに、異なる運動量の電子状態に対する重ね合わせ状態に対しても散乱断面積を計算し、従来の計算とドレス化状態を用いた計算では結果が異なることを詳細に示した。従来の計算では電子の異なる運動量状態に対する干渉項が赤外発散のために消えてしまう一方で、ドレス化状態を用いた計算では干渉項が消えずに残る。これらの結果は漸近対称性の保存則からも自然に理解できることを示すことができた。さらに、電子の異なる運動量の連続的な重ね合わせ(波束)の状態を用いた場合、従来の計算では赤外発散の効果を全て足し上げると電子は一切散乱しないという実験と矛盾する結果を導き出すことが知られていた。この問題は始状態のみが波束である場合に対しては、先行研究においてドレス化状態を用いる方法で解決されていたが、終状態も波束である場合には問題は残されていた。私たちは漸近対称性の保存則により帰結される電子と光子のヒルベルト空間の性質に基づき、従来の解析を修正し、終状態も波束である場合における上記の問題を解決した。これらの結果は素粒子の散乱理論における基礎的な計算手法の改善であり、幅広い応用に繋がり得る重要な結果と捉えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた赤外安全なS行列の重力理論への応用に関する計画は手が付けられていない一方で、前年度に引き続き量子電磁気学における散乱理論を研究し、赤外発散に伴う基本的な問題を解決することができたため大きな進展と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、赤外発散に対する正則化の手法として運動量切断の手法を用いていたが、より汎用的な次元正則化に基づいた解析を行う予定である。また、光のドレスの更なる詳細な部分を決定する手法や、重力理論などへの応用も視野に入れて研究を推進する予定である。
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