研究課題/領域番号 |
21K13928
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 慶應義塾大学 (2023) 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 (2021-2022) |
研究代表者 |
横倉 諒 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 助教 (80837831)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 高次対称性 / トポロジー / 非可逆対称性 / 高次群 / 場の量子論 / 相構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、トポロジーと高次対称性という原理に基づいて、4次元場の量子論における従来の相分類を超えた新たな相構造を解明し分類すること、そして相構造を記述する高次群を決定することである。本研究では、弦や渦、分域壁のようなトポロジーで特徴づけられる非摂動的な物体に関する高次対称性を解明し、対称性の背後にある群構造を特定する。この群は、高次群と呼ばれる従来の群を超えた数学的対象で記述できると期待できる。この高次群の構造によって、従来の枠組みを超えた相分類を行い、各相に特徴的な物理現象を対称性に基づいて予言する。
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研究実績の概要 |
本年度は、これまでの研究で多様な一般化対称性が存在することが明らかとなったアクシオン電磁気学において、アクシオンもしくは光子が質量を持った場合の非可逆対称性について研究し、その物理的意味を調べた。本研究では、アクシオンは無質量だが光子が質量を持つヒッグス相の低エネルギー極限における非可逆対称性を議論した。光子の運動方程式から、非可逆1次対称性を特定した。これまでの研究から可逆対称性の範囲では対称性のパラメータはアクシオン・光子のトポロジカル結合の係数とヒッグス場の電荷に依存して定まっていた一方で、非可逆対称性のパラメータはヒッグス場の電荷のみで決まることを示した。1次対称性の生成子が荷電粒子の閉じた世界線に対してアハラノフ・ボーム効果を与える変換として作用することから、この生成子は磁束渦と同定できることを示した。一方で、非可逆1次対称性の生成子がアクシオン渦に巻き付く配位の相関関数が消えることを示した。この性質は、先行研究で知られていた光子が質量を持たない相における非可逆1次対称性変換と同様の振る舞いであると理解できる。本研究では、この非可逆対称性変換に加えて、対称性の生成子が磁束渦と同定できるという性質から、この相関関数が消える物理的な意味は、閉じた磁束渦がアクシオン渦に巻き付くようなトポロジカルに安定な配位が禁止されうることだということを示した。さらに、この物理的意味と従来の場の量子論におけるディラックの電荷の量子化条件との関連を示した。同様の議論を、アクシオンが質量を持ち光子が無質量の相におけるアクシオンドメインウォールと磁気単極子の関係についても行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの研究成果を発展させて、アクシオン電磁気学におけるトポロジカルな物体であるアクシオン渦や磁束渦の間の物理を一般化対称性の観点から議論することができた。対称性とトポロジーを用いた場の量子論の相構造の解明に関するこれからの研究においても、アクシオン電磁気学を具体例として用いて研究を発展させたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アクシオン電磁気学における高次対称性と時空対称性の関連を調べる研究を行う予定である。アクシオン電磁気学は、ボソンであるアクシオンと光子からなる理論であるが、アクシオン・光子結合は、フェルミオンの量子異常を通じて得られる。ボソンとフェルミオンの統計性の違いは時空の回転対称性と関連するため、フェルミオンの効果が時空対称性を通じてアクシオン電磁気学にどのように表れているかを議論する。
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