研究課題/領域番号 |
21K13929
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
横倉 祐貴 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 上級研究員 (50775616)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | ブラックホール / 量子重力 / 半古典的アインシュタイン方程式 / ブラックホール撮像 / Bekenstein-Hawkingエントロピー / ブラックホールエントロピー / ホログラフィ原理 / エントロピー / アノマリー / 情報問題 / 対称性 |
研究開始時の研究の概要 |
プランクスケール近傍では物質と重力の微視的自由度が相互作用し、それにより熱平衡に至り、両者がエントロピーを担うはずである。では、重力系のエントロピーとは何だろうか?その典型的なものはブラックホールのエントロピーであるが、その起源は蒸発に伴う情報問題と深く関係している。本研究では、蒸発する性質を第ゼロ近似としたブラックホールの場の理論的記述を発展させると共に、一般の重力系に対する一般共変的なエントロピーの概念を対称性の観点から定式化し、量子ブラックホールの半古典的な有効理論を構築する。この構築過程から重力の自由度が担う役割を理解し、量子重力の真の自由度がもつべき性質を探る。
|
研究実績の概要 |
昨年度はエントロピー面積測を満たす半古典的アインシュタイン方程式の非摂動解として、量子ブラックホールモデルを直接構成した。これはホライズンを持たないが、非常に強い赤方偏移を持ち、それがどの程度観測的振る舞いと整合的であるは興味深いことである。そこで、このモデルの撮像をChe-Yu Chen氏(理研iTHEMS)と共に研究した。ブラックホールの撮像は中央の暗部を囲むリング状の明部によって特徴付けられるが、これは非常にコンパクトな天体一般で得られるものでありホライズンの存在と直接関係しない。私のモデルはホライズンを持たないため、光源から発せられた光子は内部を通過し、従来のリングとは異なる寄与を生むことがわかった。しかしそれは非常に長い時間を待った場合の理想的なものであり、物理的時間スケール(ブラックホールの蒸発時間)でみると、その非常に強い赤方偏移のためそのような寄与はほとんど消え、古典的Schwarzschildブラックホールの撮像とほぼ一致する結果が得られた。さらに、inner shadowの強度を評価するとわずかに古典的な場合に比べて明るくなり、しかもその定量的振る舞いはモデル内のパラメータ(量子揺らぎに寄与する理論の自由度や内部の相互作用の程度を表すパラメータ)と整合的であることがわかった。これはこのモデルの将来の観測予言になりうる。以上の意味で、このモデルは現在の観測データと整合的であり、量子論におけるブラックホールの有効記述になりうる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの私の研究は主に原理的側面に重きを置いたものであったが、上記研究は現象論を調べたものであり、しかもその結果はモデルの物理的構造と撮像との見事な整合性を見せている美しい結果だと思う。このような現象論的研究も含めて幅広い視点から量子ブラックホールの有効理論を考えていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
ホライズンという古典的特徴づけではなく、「ブラックホール=与えられた表面積に対しエントロピーを最大化させる配位」という量子論的特徴づけを研究し、その構造を特定する。これはエントロピー面積則による特徴づけを超えたより一般的なものであり、昨年度得たモデルが自然と導かれるかどうかを検証したい。また、Wheeler-De Witt方程式を用いた有効理論の研究も実行したい。現象論としては、重力波を考えてみたい。
|