研究課題/領域番号 |
21K13939
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 京都大学 (2022-2023) 大阪大学 (2021) |
研究代表者 |
冨田 夏希 京都大学, 理学研究科, 特定助教 (80894592)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | RPC検出器 / 飛跡検出器 / タイミング検出器 / 粒子識別 / ミューオン検出器 / 核子構造 |
研究開始時の研究の概要 |
核子とは原子の中心にある原子核を構成する粒子で、陽子と中性子の2種類がある。核子は我々にとって最も身近な粒子であるにも関わらず、その内部の構造については分かっていないことが多い。本研究では茨城県東海村にある実験施設J-PARCで、大強度のπ中間子ビームを用いて、核子の構造を探る実験を行う。生成された粒子を測定するために、高い位置分解能と高い時間分解能を合わせ持つ検出器の開発を行う。これまでの素粒子・原子核実験では、粒子の位置と時間は異なる検出器を用いて測定されていたが、本研究では位置と時間を同時に高分解能で測定できる画期的な検出器の開発を行う。
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研究実績の概要 |
核子、すなわち陽子と中性子は原子を構成するハドロンであり、我々にとって大変身近な粒子であるにも関わらず、その内部の構造はまだ十分解明されていない。核子の質量やスピンがクォークやグルーオンからどのように構成されているかを解明するためには、陽子内のクォーク・グルーオン、合わせてパートンの3次元分布を記述する一般化パートン分布関数の測定が必要不可欠である。 本研究では、世界で初めて排他的ドレルヤン反応(π-p→γ*n→μ+μ-n)の反応断面積を測定し、一般化パートン分布関数を評価するための、高位置・高時間分解能ミューオン検出器の開発を行うことを目的とする。 これまで時間測定用検出器として用いられてきたMulti-gap Resisitive Plate Chamber(MRPC)検出器に位置測定の機能を持たせることで、1台で位置と時間を同時に高分解能で測定できる画期的な大面積の検出器の開発を行う。 本研究ではサイズ50 cm × 100 cmで、読み出しストリップの間隔が5 mmの検出器を製作した。宇宙線を用いて様々なストリップ幅とグランド形状の読み出しストリップを試験し、最適な形状を決定した。 最適な形状の読み出しストリップについてビーム試験を行い、位置分解能・時間分解能の評価を行った。最も良い条件の下では、位置分解能0.75 mm、時間分解能65 psと、目標性能の位置分解能1 mm、時間分解能100 psを大きく上回る結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
位置と時間を同時に高分解能で測定できる画期的な大面積の検出器の開発に成功した。 本研究で製作した50 cm × 100 cmの大型MRPC検出器は、ビーム試験により最も良い条件の下では、位置分解能0.75 mm、時間分解能65 psと、目標性能の位置分解能1 mm、時間分解能100 psを大きく上回る性能を持つことを示した。 一方で高圧電極に用いたカーボンテープが生産停止になったため、代替品の試験が必要となった。今後代替品を用いての性能評価試験が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で高い位置分解能・時間分解能を持つ大面積MRPC検出器の開発に成功したことで、本研究の目的の核子構造研究以外の原子核実験や、火山等のミューオン透視用の実験での本検出器の利用の希望が高まっている。 今後は代替品の高圧電極を用いた検出器を製作し、再度性能評価試験を行う。新電極で充分な性能がでることを確認できれば、実機の製作を行い幅広い実験での利用を行う。
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