研究課題/領域番号 |
21K13942
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中野 佑樹 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (70781889)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 太陽ニュートリノ / ラドン / 太陽g-mode振動 / 宇宙線ミューオン / Super-Kamiokande / g-mode振動 / 星辰学 / 太陽標準模型 / 太陽フレア / 星震学 / 惑星起源・進化 |
研究開始時の研究の概要 |
太陽内部で生じているとされている太陽g-mode振動は存在が予言されているものの、未だに観測例の報告がない。これは、太陽内部の情報は、光学的に観測することができないことに由来する。したがって、本研究では、Super-Kamiokande実験で取得された太陽ニュートリノ観測データから、周期的な信号を探索することで、透過性の高いニュートリノを用いて太陽内部の運動(g-mode振動)のを探索することを試みる。最終的に、太陽ニュートリノの強度変化の振幅、太陽内部での振動現象の周期、核領域での密度変化、温度変化に関する研究成果を得ることを目標とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、3つの研究を進めた。1つ目は太陽ニュートリノ観測の主要なバックグラウンド源であるGd溶解水中のラドン濃度測定を実施した。これまでは、活性炭を用いた濃縮手法を利用していたが、中空糸膜モジュールを利用する手法を低バックグラウンドに改良した測定を実施した。数ヶ月の運用を実施し、濃縮手法の結果と比較をし、性能評価を実施している。 2つ目はもう1つの主要なバックグラウンドである宇宙線ミューオンの核破砕による放射性物質の生成に関連する研究である。宇宙線ミューオンは大気で生成されるため大気の構造 (密度分布)に依存して生成量 (Super-Kamiokandeへの到来頻度)が変化する。したがって、大気の温度とミューオンの観測数の間に相関が期待できる。大気の温度に関しては気象庁の55年長期再解析 (JRA-55)を用いてSuper-Kamiokande検出器周辺地域の大気の温度を解析した。そして、Super-Kamiokande実験の約25年の観測データに含まれる宇宙線ミューオンの事象数を評価し、大気の温度との相関を評価した。現在、この成果に関して論文を準備している。次年度以降、このミューオンの到来数をMC simulationに組み込み、太陽ニュートリノのバックグラウンドの評価を実施する。 3つ目としてGd溶解後の観測データを用いて太陽ニュートリノ測定に関連する物理解析を実施した。これまでに純水で取得されていた観測データとGd溶解水で取得された観測データを比較し、太陽ニュートリノのエネルギー領域では、エネルギースケールが1%程度で安定していることを示した。また、Gd溶解後の観測データでも、太陽方向からの太陽ニュートリノ事象の超過が観測され、これまでと同等の測定が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽ニュートリノの主要なバックグラウンドであるラドンと核破砕事象の2つに関して研究が進んでいる。それぞれのテーマで論文を投稿する準備があるため、おおむね順調に進展していると考えている。また、Gd溶解後の太陽ニュートリノ観測データの解析も進んでおり、これまでの純水時のデータに加えて600日程度の追加の観測データを利用できることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は最終年度であるため、これまでに得た結果を論文として公表する予定である。本研究課題では、バックグラウンド事象の評価に関する研究から、太陽g-mode振動の探索にどれだけの影響が考えられるかをゴールとする。バックグラウンドを総合的に考慮したMC simulationの開発、太陽g-mode振動に関する感度計算コードの準備を実施する。
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