研究課題/領域番号 |
21K13943
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
東野 聡 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (00895469)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 暗黒物質 / ガス検出器 / ピクセル検出器 / ASIC / シリコン検出器 |
研究開始時の研究の概要 |
暗黒物質の直接探索に対して、方向に感度を持つ探索を推進するNEWAGE実験は、ガスTPC内で暗黒物質が物質と相互作用し、反跳した原子核の飛跡を検出する仕組みで実験を行なってきた。従来では、ガスTPCの読み出しに 400 μm 間隔のストリップ型読み出しを使用してきたが、読み出し粒度の粗さから短飛跡の原子核反跳を検出することができず、暗黒物質の低質量領域の感度に制限をかけていた。本研究では、O(10) μm という微細間隔のピクセル型読み出しを実現すべく、シリコンピクセル検出器を用いたガス検出器の開発を行い、ガス検出器の読み出し精度に関するブレイクスルーを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では、方向に感度をもつ暗黒物質探索のためのピクセル読み出し型ガスTPCを開発することを目的としている。本来の計画である既存のシリコンピクセル検出器用の読み出しASICの応用から路線変更し、ガスTPC用のASICを新規開発することから該当年度の研究を開始した。 ASICの設計開発はKEKのE-Sysグループと協力して実施した。まず仕様の洗い出しと、それを実現する回路設計をKEKグループと入念に打ち合わせをしながら実施した。回路設計とレイアウト設計を終え、7月ごろにASICの製造を開始して10月ごろに完成した。初期バージョンは動作確認のためのプロトタイプという位置付けであったため、ガスTPCには実装せずパッケージングをして動作検証に専念して使用することにした。 パッケージングしたASICの動作検証用に、ASICを搭載する専用の読み出し基板と、それを制御するFPGA搭載基板を用意する必要があった。ASIC搭載基板は新規開発を行なった。これもKEKグループと協力して実施し、KEK現地やリモートでの打ち合わせを重ねて開発を行なった。FPGA搭載ボードは、Xilinx社製のSoCであるZYNQを搭載した市販の評価ボードを購入して利用することにした。 開発したASIC搭載基板は1月ごろに完成し、外観や電源入力時の漏れ電流値は正常であることを確認した。現在、ZYNQ搭載ボードに実装するファームウェア開発とソフトウェア開発を実施している。 ASIC開発を含むピクセル読み出し型ガスTPC開発については、2022年度の日本物理学会で2件報告し、その他国内研究会にて2件報告した。また国際会議で2件、口頭講演を行なった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度にASICを新規開発するという路線変更はあったが、その後に立て直した計画に沿って進行することができている。初期バージョンのASIC開発をおおむね予定通り行うことができ、ASIC製造と並行してASIC搭載基板の開発準備も進めてきたおかげで、ASIC基板の開発にもスムーズに移行することができた。 ASIC評価のためのファームウェア開発とソフトウェア開発に関しては計画よりも時間がかかる見込みである。計画では該当年度中に次期バージョンのASIC設計を開始する予定であったが、未だ該当年度に開発したASICの性能評価を行っている途中である。 一方、開発済みの初期バージョンASICをそのまま用いてガスTPCを動作させるプランもあり、このASICの性能に問題がなければ次年度でガスTPC開発に移行することができる。それができれば大幅に予定を踏み倒すことができるため、その可能性もふまえ、ASIC性能評価次第ではあるが研究の進捗は順調であると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の通り、該当年度に開発したASICの動作検証結果によって2パターンの研究計画を考えている。開発したASICのアップデートが必要な場合、回路設計やレイアウト設計をやり直す必要があるが、正常に動作している場合はこのASICをそのまま用いてガスTPCを開発する。 ガスTPCとして動作させるためには、ASICに電極パッドを取り付けることと、ガスを充填する小型チェンバーを開発することが必要である。これらの開発を順次行っていく。
|