研究課題/領域番号 |
21K13956
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柏野 大地 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (80897588)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 銀河進化 / 銀河形成 / 宇宙再電離 / JWST / 宇宙際電離 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は「宇宙再電離」過程の解明である。宇宙再電離とは、それまで宇宙を満たしていた中性水素を主成分とするガスが、宇宙初期に形成された天体の放射によって電離される現象であり、現代天文学・宇宙論研究の最大のテーマの一つである。本研究では国立天文台すばる望遠鏡・欧州天文台 VLT・次世代宇宙望遠鏡 JWST などの大型望遠鏡を用いて観測を行い、再電離の理論モデルの検証や再電離期の銀河の性質や再電離における役割、銀河間ガスと銀河の相互作用の包括的な理解を目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度の主要な研究成果は以下の通りである。 1) ALMA望遠鏡の観測データを用いて、赤方偏移5.7に位置する2階電離炭素輝線([CII]158μm)を放出する天体が発見された。この天体は、初期宇宙の特異な過剰密度領域に属する構成銀河であると推定されており、今回の発見は宇宙再電離や宇宙の金属汚染過程の解明に重要な手がかりを提供する可能性が高い。研究代表者(柏野)が主著者として論文を執筆し、2022年度中にNature誌に受理された。この論文は、2023年5月に出版が予定されている。 2) ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を活用した銀河探査により、約120個の遠方星形成銀河が赤方偏移5から7の範囲で検出された。それらの銀河の距離や星形成率、質量などが正確に測定され、宇宙初期における銀河進化について新たな知見が得られた。特筆すべき成果として、これらの銀河が周囲の銀河間ガスを電離している直接的な証拠が見つかったことが挙げられる。この発見は、宇宙再電離が正に星形成銀河によって引き起こされていることを示す初めての観測的証拠となる。これらの成果は、主著論文1本と共著論文2本にまとめられ、それぞれ欧文誌アストロフィジカルジャーナル誌に投稿された。2022年度中に主著論文1本と共著論文1本 (Matthee et al.) が受理され、2023年4月現在出版準備中である。 これらの成果は、遠方宇宙に関する理解を深め、宇宙初期の構造形成や再電離過程の研究に寄与することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JWSTを活用した観測プロジェクトは、2023年6月頃までに全ての観測が完了する予定であるが、2022年8月に行われた部分的な観測において物理的に意義のある結果が統計的優位性をもって得られた。これにより我々は3本の論文を執筆し、論文の内容が高く評価されたことで、2023年4月までに2本の論文が受理されるに至った。また、その後も2022年12月から2023年1月にかけて得られた一部の観測データも、順調に解析が進んでいる。
しかしながら、これらの研究を優先的に進めたことで、並行して進めている「すばる望遠鏡」を活用した研究課題などが予定よりもやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
JWST観測プロジェクトにおいては、宇宙初期の銀河進化や宇宙最電離に関し、極めてインパクトの強い成果が次々と得られている。このプロジェクトを優先的に遂行することは、世界的な競争力の観点からも重要である。現在、取得済みの約6割の観測データを用いて、複数の新しい論文が執筆中である。そのうち1本は研究代表者(柏野)が主著者として執筆し、2023年秋頃にかけて完成を目指す。また、2023年6月に取得が完了する完全なデータセットを用いた研究を2023年度末にかけて遂行する予定である。これと並行して、現在進展が遅れているサブテーマを進める。観測データの解析は順調に進んでおり、2023年秋頃を目処に論文の完成を目指す。
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