研究課題/領域番号 |
21K13963
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 東京大学 (2022-2023) 東京理科大学 (2021) |
研究代表者 |
萩野 浩一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70762061)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ブラックホール / 超精密X線分光 / 超高速アウトフロー / X線時間変動 / X線・可視・紫外同時観測 / モンテカルロシミュレーション / 放射輸送計算 |
研究開始時の研究の概要 |
超高速アウトフローは、巨大ブラックホール近傍から鉄などの重元素を光速の数十%もの速度で放出する現象であり、巨大ブラックホールと銀河の共進化に重要な役割を果たしていると考えられる。しかし、現状の観測装置では、観測可能な天体が限定されている上に、明るい天体に対しても感度が不十分であるため、その基本的な形成メカニズムですら不明である。 本研究では、2022年度打ち上げ予定のXRISM衛星による精密X線分光観測と独自の放射輸送計算によるX線スペクトルモデルを組み合わせることで、超高速アウトフローの形成メカニズムを解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
超高速アウトフローは銀河中心の超巨大ブラックホール近傍から光速の数十%という極めて高速で鉄などの重元素を放出する現象であり、その莫大な運動エネルギーから銀河とブラックホールの共進化において重要な役割を果たしていると考えられている。本研究の目的は、XRISM衛星による超精密X線分光観測と3次元放射輸送計算により、超高速アウトフローの形成メカニズムを解明することである。 今年度は、これまで開発を進めてきたXRISM衛星を2023年9月7日に無事に打ち上げることに成功した。さらにXRISM衛星の観測装置の立ち上げや校正観測運用を実施した後に、ついに超高速アウトフロー天体であるPDS 456 (PI: 萩野) を2024年3月11日から16日の計6日間 (総露光時間240 ks) にわたって観測することができた。加えて、XRISM衛星による軟X線帯域での超精密分光データを最大限に活用するために、分光性能は低いものの軟X線帯域で大有効面積を有するXMM-Newton衛星、XRISM衛星では観測できない硬X線帯域に感度を持つNuSTAR衛星でも同時観測を行った。さらには、XRISMによる観測と重なる期間で、Swift衛星、国際宇宙ステーションのNICERによるX線光度変動に特化した観測、超高速アウトフローの発生源とされる降着円盤近傍を観測可能なせいめい望遠鏡による可視・紫外帯域の観測も実施しており、極めて大規模な観測キャンペーンの実施に成功した。現在、観測データの解析および論文化を鋭意進めているところであり、これまでの観測ではわかっていなかった画期的な観測成果が見えつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ついに、XRISM衛星による超高速アウトフローの精密X線分光観測に成功し、当初計画していた以上の画期的な成果が出ることが見込まれる。しかしながら、H3ロケットの打ち上げ失敗の影響によってXRISM衛星の打ち上げ時期が遅延し、その影響で超高速アウトフローの観測も遅れたため「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
すでに、XRISM衛星を用いて超高速アウトフロー天体であるPDS 456 (PI: 萩野) の超精密分光観測の実現に成功した。さらに、XMM-Newton衛星、NuSTAR衛星、Swift衛星、NICERの計4つのX線観測宇宙望遠鏡、地上の可視光望遠鏡である「せいめい」を用いた大規模な観測を実施したことにより、解析すべき観測データが非常に膨大な量になっている。 今年度は、私がリーダーを務めるXRISM衛星によるPDS 456観測チームで手分けして、これらの観測データの解析と詳細な物理モデリングを進める。すでに画期的な成果が見え始めており、今年度中に国内・国際学会で報告し、年度内に論文として出版することを目指す。
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