研究課題/領域番号 |
21K13965
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
服部 公平 統計数理研究所, 統計思考院, 助教 (20895627)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 銀河系 / 恒星系力学 / 大規模データ / 銀河系力学 / 銀河力学 / 銀河考古学 / Gaia衛星 / 位置天文学 |
研究開始時の研究の概要 |
我々の住む銀河系は、矮小銀河のような小さな系との衝突を繰り返し、現在の姿になったと考えられている。銀河系の歴史を解明する上で最大の難関は、銀河系で過去に生じた現象が「いつ起きたのか」を正確に推定することである。本研究の目的は、銀河系に衝突してきた矮小銀河が銀河系に「いつ」衝突したのかを、その残骸として現在も銀河系に残る星の軌道情報から推定し、銀河系が経験した衝突の歴史を描く「精密な歴史年表」を作成することである。
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研究実績の概要 |
人類の住む天の川銀河は、小さな矮小銀河の衝突と合体を経て現在の姿になったと考えられている。銀河系の歴史を知る上では、過去にどのような矮小銀河が銀河系に衝突したのかを突き止める必要があるが、衝突した矮小銀河の発見は、(1)力学的な位相混合の効果(2)観測誤差の効果によって、困難であった。本研究では、運動の保存量である軌道作用積分(orbital action)を用いることで(1)の困難を克服し、新たに開発した統計数理手法(Greedy Optimistic Clustering;貪欲楽観クラスタリング法)によって(2)の問題を解決した。 貪欲楽観クラスタリング法は汎用性が高い手法であるが、具体的に本研究で扱うデータを例にとってその応用について説明する。本研究で扱うデータは、(太陽系にいる観測者から見た)星の位置と速度の6次元データである。この6次元データのうち5次元データは人工衛星の観測によって高精度で推定されており、観測者から星までの距離の1次元データに誤差が大きいという特徴がある。本研究では、観測誤差の取りえる範囲で乱数を振ることで合成データを100個生成し、100個の合成データのどれか1つは真値に近いという仮定を置いた上で、クラスタリングを行う。すなわち、「それぞれの星のデータの真値は100通りの中のどれであるか」を推定しつつ、「推定された星のデータの真値をもとにクラスタリングを行う」という2段構えでクラスタリングを行う。この例では貪欲楽観クラスタリング法は扱うデータ量が普通のクラスタリング手法の100倍に増加するため、計算の高速化が実用上の重要な課題である。本年は、この計算の高速化のためのアルゴリズムの改良に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貪欲楽観クラスタリング法の一番の課題は計算の遅さである。本年はこの計算を高速化するアルゴリズムができ、大規模データへの応用が可能となったため。
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今後の研究の推進方策 |
貪欲楽観クラスタリング法を人工衛星Gaiaの大規模データに応用する研究を行う。Gaia DR3によって視線速度データが入手可能な3300万天体のデータから、年齢の年老いた星を10万天体程度選び、クラスタリング解析を行うことで、人類の住む銀河系の形成の歴史を解明することを目標とする。
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