研究課題/領域番号 |
21K13969
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
濱野 哲史 国立天文台, ハワイ観測所, 特別客員研究員 (70756270)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | フラーレン / 赤外線高分散分光 / 星間物質 / 星間有機分子 / DIB / 星間分子・ダスト |
研究開始時の研究の概要 |
近年、星間・星周物質中において同定された分子種族「フラーレン」は、他のこれまで発見されてきた星間分子と比べてサイズが非常に大きく、閉殻状の特異な構造を持っており、宇宙における化学プロセスの解明に向けて重要である。本研究では、高感度な近赤外高分散分光器WINEREDを用いて、最も代表的なフラーレンであるC60の陽イオンによる近赤外吸収バンドを銀河系内外縁部、近傍銀河において系統的に観測し、フラーレンの分布や、金属量をはじめとした星間物質の物理量や未同定星間分子バンドとの関連を調べ、フラーレンの生成・破壊に関わる化学プロセスを解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、C60に代表される閉殻状の炭素分子種族「フラーレン」に着目し、星間物質中におけるフラーレンの基本的な性質を明らかにすることを目的とし、近赤外線高分散分光器「WINERED」を用いた銀河系内外縁部、近傍銀河における星間フラーレンの観測を行い、その分布やガス雲の物理パラメータとの関係を明らかにするものである。 本年度は、昨年度までの試験観測の結果を解析・考察した上で観測プランを策定し、チリ・ラスカンパナス観測所にて2回の本観測を実施することができた。2回の観測でそれぞれ、宇宙におけるフラーレンの生成に深く関わっていることが期待される惑星状星雲の観測、および銀河系内と星間物質の環境が異なりフラーレン生成のメカニズムを解明する上で重要な情報が得られると期待されるマゼラン雲銀河中の早期型星の観測に成功した。それぞれ星間物質におけるフラーレンについて重要な情報が得られることが期待され、今後データの解析、考察を進めていく。また本年度は、研究の効率的な推進のために開発した観測データを解析するパイプラインソフトの解析内容をまとめた論文を海外誌にて発表した (Hamano et al., 2024, PASP, 136, 014504) 。近赤外高分散分光器による観測で得られるデータの複雑な解析処理をほぼ全自動化することに成功し、本研究のみならずWINEREDを使った今後の国内外の観測研究において広く使われ、研究の効率化、データ処理の高品質化・標準化に大きく寄与する。多数の天体を扱う本研究において、効率的かつ標準化されたデータ解析ソフトは成功の鍵を握る重要なファクターであり、論文として発表できたことは大きな進捗である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外の望遠鏡を用いる本研究は過去2年間パンデミックによる影響を受けており、当初の計画よりも遅れはあるものの全体としてはおおむね順調に進捗している。本年度は、本観測を2回実施することに成功し、研究の鍵を握る重要な観測データの取得に成功した。また、観測データを自動的に処理できるパイプラインソフトの内容を論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに取得できた銀河系内・近傍銀河の天体のデータ解析を進め、星間フラーレンの存在量の測定を行い、これまででも最も高品質かつ大規模な星間フラーレンのデータセットを作成し発表する。フラーレンの存在量と他の星間分子吸収帯(DIB)や水素をはじめとした星間物質を構成する原子・分子の量の間の関係性、またフラーレンの分布・性質について比較し、星間物質中におけるフラーレンの存在量を決めるファクターを明らかにする。これらの研究から考察を進め、本研究の最終的な目標であるフラーレンの生成・破壊のメカニズムに迫る。並行して、まだ観測できていないターゲットをマゼラン望遠鏡とWINEREDを用いて観測を進めていく。
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