研究課題/領域番号 |
21K13977
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17010:宇宙惑星科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今城 峻 京都大学, 理学研究科, 助教 (70795848)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | オーロラ粒子加速領域 / 沿磁力線電流 / 準静電的平行電場 / 高高度衛星観測 / 降り込み電子観測 / 静電波 / 高エネルギーイオン流出 |
研究開始時の研究の概要 |
代表者等の研究では一般的なオーロラ粒子加速域高度である数千km高度よりはるかに高い高度の「あらせ衛星」と地上の全天カメラを用いて、高度30,000km以上という超高高度で準静電的加速を受けた電子が100km高度まで降下しオーロラ発光に寄与している直接的な証拠を世界で初めて発見した。しかし、その加速電場の生成メカニズムを考察する上での観測的知見はまだ十分ではない。本研究では「新たに発見された超高高度加速域が、これまで知られている典型的な加速域高度と全くことなるプラズマ・磁場環境であるにも関わらずなぜ加速メカニズムが存在しうるのか」を明らかにする。
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研究実績の概要 |
令和4年度は(1)オーロラ加速領域の赤道面投影点付近でどういった兆候がみられるかを示したイベント解析例の論文化、(2)高高度で観測される単一エネルギー的な電子の降込が観測されたイベントの収集、 (3)そのうち特に条件の良かったポテンシャル加速的電子降込の1例の総合的解析、を行った。去年度より進めていた(1)は、あらせ衛星が内部磁気圏の比較的赤道に近い位置で下側の加速域の兆候のあるイベントに関して詳細に調べた。この結果は2022年5月にGeophysical Research Letter誌で出版された(doi: 10.1029/2022GL098105)。(2)では高高度のオーロラ電子加速イベントを高度4地球半径以上でかつ単一エネルギー的で磁力線方向(ピッチ角5度以内)の高角度分解能電子データで降り込みが観測されたイベントを5例同定した。内1例は継続時間が10分程度と長く、明瞭な位相空間密度のピークをしめす典型的なポテンシャル加速的分布であり、この例(2017年9月16日5時50分~6時00分UT)を詳細に調べた。高度約5Reという高い高度におけるロスコーン幅とその内側の正味フラックスの初めて定量的に推定することに成功し、観測された磁場の変動の仕方や典型的なオーロラアーク上空の電流密度と整合的な結果が得られた。加速された電子の異方性から、加速領域の上部境界の高さは衛星の上方約2Reと推定された。また、短時間の磁場の変動で示される薄い沿磁力線電流を持つサブ秒スケールの静電波も観測された。この静電波は、超高高度での電気二重層の形成により発生し伝播したものと考えられる。これらの結果は2022年度SPGESS秋学会にて発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
去年途中まで進行していた、オーロラ加速領域の赤道面投影点付近でどういった兆候がみられるかを示したイベント解析例の論文化は予定通り完了した。衛星が夜側オーロラ帯上空でかつ高角度分解能電子観測装置の視野が磁力線方向を向いているすべての期間に関して期間に関してデータを可視化し、高高度で観測される単一エネルギー的な電子の降込が観測されたイベントの同定が完了した。結果としては、高高度で観測される単一エネルギー的な電子の降込が観測されたイベントと明確に言えるものは5例程度と少ないことがわかり、個別事例の理解を深めることを目指した。内1例の明瞭な位相空間密度のピークをしめす典型的なポテンシャル加速的分布に関してはオーロラ加速領域の観点から総合的な解析がほぼ完了している。2022年12月途中より育児休業に入ったため、当初予定していたこの結果の年度中の論文投稿には至っていない。また、コロナウイルス感染拡大と感染を極力回避すべき家庭的事由があったため、出張は国内の主要な学会のみに限られた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年7月から育児休業より復帰予定であり、まずポテンシャル加速的電子降込の1例の総合的解析の論文化を進める。研究協力者がおおく在籍する名古屋大学宇宙地球環境研究所を定期的に訪問し、研究結果や今後の方策に関して議論を行う予定である。新たに追加されたきっかんのデータに関しても高高度で観測される単一エネルギー的な電子の降込イベントがないか調査し、これまで選定したイベントを含め個別に詳しく分析する。個々のイベントの発生要因に関して、準静電的な加速の観点にこだわらずに考察する方針である。特に、新たに発見した短時間の磁場の変動で示される薄い沿磁力線電流を持つサブ秒スケールの静電波に関しては、同様のイベントが他にないか調査し、研究協力者が取り組んでいる電気二重層の数値シミュレーションの結果とも比較を行う予定である。コロナウイルス感染拡大や育児休業により、当初計画より十分な研究活動が出来なかったため、研究期間の延長も検討する。
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