研究課題/領域番号 |
21K13990
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 富山大学 (2022-2023) 東京大学 (2021) |
研究代表者 |
小林 英貴 富山大学, 学術研究部理学系, 特命助教 (70868207)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 海洋炭素循環 / 海洋深層循環 / 海洋物質循環モデル / 気候変動 / 海洋大循環 / 氷期気候変動 |
研究開始時の研究の概要 |
温室効果ガスである二酸化炭素は、気候状態を決定する重要な因子である。約 2 万年前の最終氷期最盛期の低い大気中二酸化炭素濃度をもたらすメカニズムに迫るため、本研究では、全地球海洋を扱う海洋モデルを用いた数値実験で氷期の気候状態を再現した上で、海洋の炭素循環の変化が大気二酸化炭素濃度に及ぼす影響を定量的に評価し、その変動メカニズムの理解を進める。本研究で計画する研究項目は、既存の海洋モデルに新たなパラメタリゼーションを導入するモデル改良、氷期の海洋炭素循環の再現性を議論する複数のトレーサー解析、ならびに氷期-間氷期間の海洋炭素循環の過渡応答の評価である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、海洋深層までのプロセスを組み込んだ全球海洋循環モデルを用いて、海洋および表層堆積物における全球海洋炭素循環をモデル化し、過去の大気中二酸化炭素濃度の変化に対する海洋諸過程の役割を評価することである。全地球規模の海洋を扱う海洋大循環モデルと海洋トレーサーモデルを用いて、現在に最も近い氷期である最終氷期最盛期と、最終氷期最盛期から間氷期である完新世までの気候遷移である最終退氷期に焦点を当てて数値実験を行った。 まず、最終氷期最盛期を対象とした数値実験により、南大洋の成層化や鉄肥沃化、炭酸塩補償が氷期の海洋における炭素貯留量の増加に重要であることを定量的に明らかにした。さらに、海底堆積物に残る地質記録とモデルの出力を比較することで、各過程が氷期と間 氷期との間の溶存酸素や炭素同位体比の変化にどの程度寄与しているのかを明らかにした。 次に、最終氷期最盛期から完新世までの海洋炭素循環の過渡的な応答を調べる実験を実施した。最近の研究で集積された、最終退氷期における安定炭素同位体および放射性炭素同位体の地質記録を収集し、その海盆規模の分布をモデル実験の結果と比較した。炭素同位体比の変化が、最終退氷期に起こる大西洋子午線循環の急激な変化によってどの程度説明できるかを明らかにした。さらに、気候と海洋循環の変化に伴う大気中二酸化炭素濃度の変化について、その変化要因を切り分けて定量的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、気候モデル研究と連携し、最終退氷期における海洋の炭素循環の過渡応答を調査する実験を実施した。最終退氷期の炭素同位体堆積物の記録を収集し、モデル実験の結果と比較することにより、炭素同位体比の変化の一部は大西洋子午面循環の急激な変化によって説明できることが判明した。一方で、大気中の二酸化炭素濃度や炭素同位体比についての再現性は不十分であり、これに寄与する潜在的なプロセスについて議論した。これらの結果は、原著論文として報告した。一連の研究は、最終退氷期初期において、南大洋における表層水温の上昇と鉛直混合の活性化のタイミングが、大気中の二酸化炭素濃度の増加速度を決定する上で重要である可能性を裏付けるものである。 したがって、海洋炭素循環の自然変動のプロセスの理解を深めるための実験計画を引き続き検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を報告するとともに、気候モデルの研究者と連携して新たな実験計画を検討していく。
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