研究課題/領域番号 |
21K14007
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊東 優治 東京大学, 地震研究所, 助教 (40878724)
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研究期間 (年度) |
2022-12-19 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | スロースリップイベント / 微動 / 高サンプリングGPS / 余効すべり / 震源過程 / スロー地震 / スロースリップ / GPS / キネマティック解析 / SSE / サイドリアルフィルタ / GNSS / マルチパス |
研究開始時の研究の概要 |
スロー地震に伴い断層で生じるすべりの継続時間は1秒以下から数年と広帯域に亘るが、数百秒から数日程度の継続時間を持つすべりイベントの存在は充分には知られていない。本研究では、キネマティックGNSS(GPS)による地殻変動データを用いてこの帯域におけるスロー地震、中でもスロースリップイベントを探索し、すべりをモデル化することで断層パラメタを拘束する。そのために必要なキネマティックGNSS座標時系列データに含まれる系統誤差の低減手法を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、観測機器の特性の問題から今までほとんど知られてこなかった、数百秒から数日程度の時間スケールにおけるスロー地震の特徴を、GPSデータの1日以下の時間間隔による高サンプリング解析の結果を用いて明らかにすることを目指す。 本年度はスロー地震の中でもEpisodic Tremor and Slip(ETS)と呼ばれる微動を伴う比較的大規模なスロースリップイベント(SSE)の開始過程の解明に焦点を絞った解析を実施し、その結果に基づきETSの開始過程のメカニズムを議論した。高サンプリングGPSデータ(5分間隔)と微動カタログを用いて、北米カスケード沈み込み帯における複数のETSを解析し、開始過程におけるSSEと微動活動の時間変化を比較したところ、SSEの活動活発化が微動に対して1日前後遅れる傾向にあることがわかった。これまではSSEと微動の活動が時間的に一致すると考えられてきたが、高サンプリングGPSデータを用いて、狭い時間窓で両者の関係を議論した場合に、活動度の変化に時間的ズレがあることが明らかになった。この活動度の時間的ズレ並びに既知の観測結果を統一的に説明し、スロー地震の力学的メカニズムに関する問題を解決しうる、スロー地震の開始過程に関する新しい概念モデルを考案した。現在これらの内容をまとめた査読付学術論文を準備中である。 また、ETSの開始過程に関する研究と並行して、昨年度に着手していた2014年イキケ地震の本震と最大余震の間の27時間の余効すべり(スロー地震の一種)や、2017年バルパライソ地震の前震活動期から余震活動期に亘って2週間程度継続したSSEを、高サンプリングGPSデータを用いて解析し、それらが通常の速い地震の発生に及ぼした影響を議論した。その結果を査読付学術論文にまとめ、公表した(Itoh et al., 2023、Moutote et al., 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、大規模なETSの開始過程に伴うSSE並びに微動活動の時間発展の長周期成分を精緻に解析し、両者の時間発展に関する新たな特徴を明らかにした。更にその結果に基づき、これまで観測されているETSの特徴を包括的に説明する概念的なモデルを考案した。本年度は、当初の目標である数百秒から数日程度の継続時間を持つSSEの直接的な検出に至らなかったが、そうしたイベントの規模等の特徴を、本年度考案したETSの概念的なモデルから想定できるようになった。本年度得られた進捗は、当初の目標の達成に向けた次年度以降の研究方針を立てる上で非常に有用であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の項目に取り組む予定である。 ・本年度実施したETSの開始過程に関する解析結果と新しい概念的モデルに関する論文の出版に向けた投稿・査読対応を進める。 ・本年度開発した手法を用いて、小規模な微動活動の発生期間の高サンプリングGPSデータを解析し、対応するSSEの発生可能性を議論する。また、高サンプリングGPSデータのノイズレベルと、解析手法に依存することが想定されるすべりシグナルの検出下限を議論することで、小規模な微動活動に伴い生じるSSEの大きさの上限を押さえる。対象研究地域は北米カスケード沈み込み帯を予定。 ・北米カスケードにおけるETSよりも小規模なイベントの発生が知られている南海トラフの解析に向けた準備を進める。具体的には、国土地理院が設置するGNSS観測網GEONETのデータに加え、民間企業の設置したGNSS観測点のデータを統合解析するための計算機環境の整備並びに、効率の良い高サンプリング解析のためのプログラム解析等を実施する。
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