研究課題
若手研究
本研究では、過去の巨大地震に伴う地滑りで移動した岩塊(巨礫)の移動履歴を、地磁気を利用した年代測定から解明し、活断層型巨大地震の評価に活かす。そのために以下の3 点に取り組む。1、岐阜県郡上市や本巣市周辺に点在する1586年の天正地震や1891年の濃尾地震に関連した地すべり地形を調べ、年代不詳の巨礫に対し地磁気を用いた年代測定を実施する。2、 カナダアルバータ州に存在する巨礫に年代測定を実施し、地震起源か繰り返される退氷によって段階的に移動したのかを区別する。3、従来の地磁気年代測定の実際よりも古い年代値を算出する問題を解決するため、緩和関数の物理仮定と磁性粒子の分布を関連させて評価する。
本研究の目的は、過去の巨大地震に伴う地滑りで移動した巨大な岩塊(巨礫)の移動履歴を、地磁気を利用した年代測定から解明し、活断層型巨大地震の評価に活かすことである。そのために、岐阜県郡上市や本巣市周辺に点在する1586年の天正地震や1891年の濃尾地 震に関連した地すべり地形を調査し、昨年度と同様に巨礫試料の採取を行った。また、地すべり地形を調査する過程で、過去の地すべりによって形成された堰き止め湖の堆積物を発見した。これらの堆積物から採取した種子などから、放射性炭素年代を測定した。その結果、堆積物の一つからは先行研究で報告されている年代と同等の天正地震程度の年代を得られた。また、もう一つからは天正地震よりも100年ほど古い年代値を得ることができた。このことから、天正地震以前に堰き止め湖が形成されている可能性があることがわかった。また、巨礫から正確な年代測定を行うために、巨礫を形成する安山岩に含まれる斜長石や輝石単結晶から地磁気年代を求めるための手法開発を行った。バルクサンプルは、化学変質を受けている可能性があり、磁気記録の消磁温度が200度を大きく上回ってしまうことがしばしば発生していた。そこで、単結晶試料を岩石から分離し、熱消磁実験を行うことで、200度以下で複数の磁気記録を確認できることがわかってきた。この実験を継続的に実施し、正確な年代決定を行うことを可能にしていく。昨年度国際誌に投稿していた、緩和関数の物理仮定からのずれと磁性粒子の分布を関連させた地磁気年代測定に関する論文も受理されたため、本研究の予算を用いて出版を行なった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は試料採取と実験、手法開発を同時に進行できた。また、関連研究の論文を出版することができた。
採取した巨礫試料から単結晶試料の作成を継続的に進め、熱消磁実験を進めていく。また、磁気緩和実験やヒステレシス曲線、FORCダイアグラムなどの測定から、主たる磁気の担い手(鉱物)の同定とその粒径分布などを推定する。文献調査なども継続的に実施し、研究成果をまとめて国際誌へ投稿できるように研究を推進していく。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件)
Scientific Reports
巻: 12 号: 1 ページ: 112-112
10.1038/s41598-022-17048-8
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 126 号: 12
10.1029/2021jb023027