研究課題/領域番号 |
21K14012
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
森 宏 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (80788183)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 変成温度解析 / 熱モデリング / 接触変成岩 / 炭質物ラマン温度計 / 黒雲母チタン温度計 / 角閃石温度圧力計 / 地温勾配 / 貫入岩 / 変成温度構造 |
研究開始時の研究の概要 |
沈み込み帯における長期的かつ広域的な温度構造の変遷を探る上では,時代・場所ごとの正確な地温勾配の把握が重要となる. 地表に露出する岩石を用いた地温勾配に関する代表的なアプローチとして,深部埋没時の温度解析が挙げられるが,長期間の埋没過程および変形作用の影響により正確な地温勾配の推定が困難となっている. 本研究では,高温マグマの熱影響を被った接触変成岩の温度履歴に着目し,地質学的アプローチによる接触変成岩の温度解析および熱モデリングによる温度構造再現を組み合わせた,高時空間解像度を有する新たな地温勾配推定手法の確立を目指す.
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研究実績の概要 |
沈み込み帯における諸現象の理解には,地球内部温度構造の解明が必要不可欠である.また,長期的かつ広域的な温度構造の変遷を探る上で,地温勾配の把握が重要な手がかりとなる.本研究では,接触変成岩の温度履歴に着目し,変成温度解析および熱モデリングによる温度構造再現を組み合わせた,地温勾配推定を目指している. 2023年度は,中部地方に分布する木舟貫入岩体周辺の接触変成域を対象に,詳細な温度構造解析を実施するとともに,木舟貫入岩体の岩石学的解析を進めた.接触変成域の解析に関しては,これまで温度情報が不足していた貫入境界近傍域を中心に実施した.その際,本研究の主要な温度推定手法である炭質物ラマン温度計に加えて,黒雲母チタン温度計を用いた解析にも着手した.そして,炭質物を含まない地域でも,変成温度推定が可能となり,十分な温度データを蓄積することができた.また,貫入岩体の解析に関しては,角閃石温度圧力計を適用して,貫入時の温度・圧力条件の詳細を制約することができた. また,接触変成域での温度解析に関連して,炭質物ラマン温度計の精度向上への取り組みにも着手した.具体的には,木舟貫入岩体周辺域に加えて,先行研究において炭質物ラマン温度計を構築する際に利用された他の接触変成域の岩石試料なども用いて,試料内での炭質物特性の不均質性を検討するとともに,岩石組織ごとの評価も行った.その結果,各地点の温度推定における必要な取得データ数の把握とともに,伝導熱以外の影響(流体の影響など)の識別に関する知見を得ることができた.そして,正確な熱モデリングとの比較においても重要となる,変成温度解析の精度向上を前進させることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木舟貫入岩体周辺の接触変成域に関しては,本研究の主要な変成温度解析手法である炭質物ラマン温度計に加えて,炭質物を含まない岩石試料に適用可能な黒雲母チタン温度計の利用を試みた.その結果,これまで炭質物が認められないために温度解析が困難であり,かつ,正確な地温勾配推定に向けた熱モデリングとの比較においても重要であった貫入境界近傍域での温度データの詳細取得ができた.また,木舟貫入岩体に関しても,角閃石温度圧力計を適用した解析を進め,マグマ貫入時の温度圧力条件を制約できた. 一方,接触変成域における炭質物ラマン温度計による温度解析を進めていたところ,試料内におけるデータの不均質性が大きく,かつ,岩石組織ごとにもデータ特性が大きく異なる岩石試料が,貫入境界近傍の複数地点で認められ,単純に温度推定において平均値を使用できないことが判明した.そこで,木舟貫入岩体周辺域に加えて,先行研究において炭質物ラマン温度計構築の際に利用された貝月山貫入岩体周辺の接触変成域の岩石試料なども用いて,試料内での炭質物特性の不均質性を検討するとともに,岩石組織ごとの特性比較を行った.その結果,被熱温度ごとに不均質性が異なることや,同一試料であっても他の鉱物と鉱物の間に存在する炭質物の方が,他の鉱物に包有された炭質物に比べて温度推定値が異常に高くなることを明らかにした.そして,温度解析に必要な取得データ数および熱伝導モデルとの比較に使用可能な分析対象を把握することができた. なお,木舟貫入岩体周辺の炭質物ラマン温度計による温度解析については既に査読付の国際誌に投稿済であり,また,もう一つの主要研究対象である甲斐駒ヶ岳貫入岩体周辺域に関しても論文執筆を進めており,2024年度内に投稿できる状況である. 以上のことから,本研究は順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,木舟貫入岩体周辺の接触変成域を対象として,特に,流体の影響を識別した上での,貫入当時の正確な温度構造の把握と,熱モデリングとの比較を進める予定である.また,貫入時期の大きく異なる貝月山貫入岩体周辺の接触変成域でも同様のアプローチを進め,地質環境・貫入時期と熱構造・地温勾配との関係性について検討していく予定である.
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